演題

RS3-139-12-5

緩和治療における消化器外科医の役割-難治性腹水に対する腹水濾過濃縮再静注療法(KM-CART)による緩和治療

[演者] 鹿島 康薫:1
[著者] 足立 武則:1, 原 信寿:1, 高橋 雅一:1, 早乙女 勇:1, 松﨑 圭佑:2
1:とちぎメディカルセンター 外科, 2:要町病院 腹水治療センター

【目的】外科医が行う緩和治療への関わりとして,難治性腹水症例に対し改良型腹水濾過濃縮再静注システム(KM-CART)を用いた治療を行っているので報告する.
【方法】対象は2010年4月から2016年12月までに難治性腹水に対してCARTを施行した85例,男性45例,女性40例,平均年齢71.5歳(44-93歳).胃がん21例,肝硬変20例(肝細胞がんの合併11例),大腸がん12例,膵がん10例,胆道がん9例,卵巣がん,原発不明がん各4例,乳がん2例,腎細胞がん,子宮がん,悪性リンパ腫各1例計248回のCARTを実施した.平均施行回数4.2回(1-30回).処理腹水量,濃縮液量,濃縮液の総蛋白およびアルブミン値,所要時間,処理速度,副作用,アンケートによる患者満足度を検討した.
【結果】処理腹水量は5197.5ml(700-17866)で,濃縮液量は428.6ml (20-1800),濃縮液の総蛋白およびアルブミン値は,15.4g/dL (2.0-24.6),7.6g/dL (0.8-14.0),所要時間は103.9分(5-390),処理速度は20.0分/L (2.4-83.9),膜洗浄回数は0.8回(0-6)であった.軽微な発熱を少数に認めたほか重篤な副作用は1例も認めなかった.患者アンケートの結果より,腹部膨満感の軽減や食欲の改善など症状改善効果が高く,患者満足度は高いと評価した.
【考察】難治性腹水症例に対するKM-CARTを用いた緩和治療は安全性,有効性に優れ,積極的に行われるべきである.腹部膨満感の軽減や食欲の改善など腹水ドレナージの直接効果に加え,血漿浸透圧の上昇,循環血漿量の増加,腎・消化管血流の改善による利尿剤の効果から腹水再貯留までの時間延長効果,全身状態,栄養状態の改善からQOLの向上が期待できる.また,膜洗浄にて回収したがん細胞が免疫療法,抗がん剤感受性テストなどに活用でき,闘病意欲の回復,治療の継続や治療効果の増強,そして予後とQOLの改善に貢献できる治療である.患者アンケートの結果から呼吸症状や浮腫の軽減効果や動きやすくなった,歩きやすくなったなどQOLの改善に有効で,患者満足度の高い治療である.
【結語】緩和治療における消化器外科医の役割として,当院で行っている難治性腹水に対する腹水濾過濃縮再静注療法(KM-CART)による緩和治療について報告した.緩和ケアチームのワーキングチームとしてチームCARTを結成し,在宅ホスピスとも連携し,在宅でも安心して施行できている.臨床工学技士を含む多職種が積極的に参加するチーム医療のひとつのモデルと成りうると考える.
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