演題

SY04-1

安全・安心な臓器移植のために出来ること:臓器提供推進と免疫寛容の誘導

[演者] 嶋村 剛:1
[著者] 山下 健一郎:2, 藤堂 省:3
1:北海道大学病院 臓器移植医療部, 2:北海道大学大学院 移植外科学講座, 3:聖マリア病院

臓器移植をより安全・安心なものにするためには,多面的な取り組みが必要である.的確な時期での移植手術実施を含む適応の判断,術前のコンディショニングを含む周術期管理,手術そのもののプランニングと柔軟な手術手技の選択,術後拒絶反応の制御や長期免疫抑制療法下での合併症の回避などがレシピエント側の要素として挙げられる.一方,生体ドナーにおいて絶対命題である安全性を担保する確実な評価と手術,脳死下や心停止後の臓器提供の推進と平等性・妥当性・透明性をもつ分配システムの確立などがドナー側の要素となる.
レシピエント側の新しい方向性として,われわれはex vivoでレシピエント末梢血単核細胞をドナー抗原で刺激することにより調節性T細胞を誘導し,この細胞を用いて免疫寛容をもたらすべく生体肝移植に応用した.その結果,10例中7例で完全に免疫抑制剤を中止することができ,これら7例全例で中止後38-55ヶ月経過した現在も拒絶反応の兆候は認められていない.
ドナー側の取り組みとして,1999年に臓器提供の推進と移植医療の発展を目的としたNPO法人を立ち上げ,以後,社会一般に対する啓蒙や医療従事者に向けた数多くの活動を行っている.その結果,2013年の総理府調査では全国で最も移植医療に興味のある地域となったのみならず,2016年末までに35例の脳死下臓器提供が得られた.これは日本全体の脳死下臓器提供総数の8.3%にあたり,年間の当該地域居住人口100万人当たりの提供数は0.87と国内で最も高い値となっている.
臓器移植のさらなる発展には,移植外科医の不断の努力が求められる.それはレシピエントの短期・長期予後の改善を目的とした研究・臨床はもちろんであるが,臓器提供推進についても考慮したものでなければならない.移植医療を通じて元通りの健康な生活を取り戻す患者が増えれば移植医療への理解が拡がり,そのことがまた臓器提供に対する認識を深めるためである.その意味で,わが国の移植外科医は移植実施と臓器提供,すなわち移植医療の両輪に関わる必要がある.
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