演題

RS1-36-14-5

腹部臓器損傷を伴う多発外傷に対する消化器外科医の役割

[演者] 赤星 朋比古:1
[著者] 長尾 吉泰:2, 池田 哲夫:3, 橋爪 誠:1, 前原 喜彦:3
1:九州大学大学院 災害・救急医学, 2:九州大学病院 救命救急センター, 3:九州大学大学院 消化器・総合外科学

背景】当院では救命センター専従の消化器外科医を配置し,JATECとATOM(Abdominal trauma operatie management)コースの受講と実践を通して外傷診療に精通した消化器外科医の育成を行っている.
【目的】外傷診療における消化器外科医の本邦における重要性について考察し明らかにする.
【対象と方法】検討1. 2006年から2016年10月までに当救命センター入院した外傷患者のうち,腹部臓器損傷を伴った症例は127例で専従の消化器外科医増員前後(前期群vs.後期群)での,受傷機転,損傷部位,治療内容,転帰について比較検討した.検討2:日本ATOMコースにおける受講生にアンケート調査(九州大学での受講生を対象)を行い,外傷におけるoff the job trainingの有用性について検討した.
【結果】検討1:受傷機転は交通外傷66例,転倒・転落36例,刺傷27例であった.腹部臓器の損傷部位としては肝臓45例,脾臓30例,消化管(腸間膜含む)23例,腎臓21例,膵臓7例であった.重症多発外傷患者に関して,輸血開始までの時間は前期群117±17分,後期群62±23分(p=0.05),止血処置までの時間は前期群で155±20分,後期群で88±30分と短縮した (p=0.01).特に開腹手術までの平均時間と救命率は,前期群で165±50分,75%(6/8),後期群は73±55分,83%(5/6)であった(p<0.01).検討2:受講生22名からアンケート結果を回収することができた.有用と考えられた手技は,心損傷に対する手技であり,2名において,実際の心損傷に対して消化器外科医が対応し救命できたとの結果であった.
【考察】日本おいて外傷外科を専門とする外科医はきわめて少なく一部の地域に限られている.外傷センター整備が図られない限り,重症体幹部外傷の救命率の向上は望めず,今後も低下する一方である考えられる.消化器外科医が一定期間,救急医療に携わり,Off the job trainingなどにより教育されることが問題の解決策の一つと考えられる.
【結語】日本の外傷診療において消化器外科医の力は不可欠である.
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