演題

RS1-36-14-2

腹部緊急手術時における抗血栓薬の術中出血量・周術期出血/血栓合併症に対する影響

[演者] 松岡 義:1,2
[著者] 篠﨑 浩治:1, 寺内 寿彰:1, 木全 大:1, 古川 潤二:1, 小林 健二:1, 尾形 佳郎:1
1:済生会宇都宮病院 外科, 2:慶應義塾大学医学部 救急医学

【目的】消化器外科予定手術では, 一般的に抗血小板薬や抗凝固薬などの抗血栓薬は休薬期間を設け, その薬理作用が消失した状態で手術に臨む事が多い. 一方で, 緊急手術の際には, その作用が残存している状態で手術を施行しなければならない. 抗血栓薬の最大の合併症は出血であるが, 術中出血量に与える影響は十分に検討されておらず, 今回, 抗血栓薬内服の有無と術中出血量の関係を検討した. 【方法】2014年1月から2015年12月までに当院で施行した緊急手術症例を対象とし, 年齢, 性別, 併存疾患, 手術部位, 抗血栓薬の内服の有無, 術中出血量, 周術期輸血量, 死亡率, 出血/血栓合併症, その他合併症発症率について後方視的に検討した. 【結果】該当期間中の緊急手術症例は, 774例であった. マイナー手術等を除いた666名のうち, 抗血栓薬内服群(AT群)は104例, 非内服群(C群)は562例であった. 年齢, 性別, 手術部位での傾向スコアマッチングで調整したAT群, C群それぞれ74名で各項目を比較した. 両群で出血量は有意な差は認めなかった(AT群 vs C群:145.5 ± 218.5 vs 138.4 ± 245.6 ml, p=0.85). 赤血球濃厚液, 新鮮凍結血漿輸血量も両群において有意な差は認められなかった(1.0 ± 2.7 vs 0.9 ± 2.8 単位, p=0.54, 2.2 ± 7.1 vs 3.0 ± 9.6 単位, p=0.13). さらに死亡率, 入院期間においても有意な差は認められなかった(9.5 % vs 6.8 %, Odds ratio (OR) 1.00, p=1.00, 25.5 ± 18.6 vs 25.6 ± 20.3 日, p=0.98). 出血/血栓合併症も有意な差は認められず(2.7 % vs 2.7 %, OR 1.00, p=1.00, 2.7 % vs 4.1 %, OR 0.65, p=1.00), その他の合併症においても同様であった(いずれもp>0.05). 死亡群と生存群を比較し, 単変量解析で有意差のあった, 年齢, 糖尿病, 透析, 高血圧, 下部消化管疾患, 虫垂炎, 抗血栓薬使用, 出血量, 赤血球濃厚液/新鮮凍結血漿輸血量を共変量とし, 多変量解析を行った. その結果, 年齢, 透析, 下部消化管疾患, 新鮮凍結血漿輸血量が独立した死亡リスク因子であった. 【結論】背景を調整した結果, 両群では出血量をはじめとし, 出血/血栓合併症などいずれの項目でも有意な差は認められなかった. 死亡のリスク解析においても抗血栓薬は独立した因子とならなかった. 本検討により抗血栓薬使用患者においても腹部緊急手術は安全に行える可能性が示された.
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