演題

RS3-143-13-4

抗血栓剤服用歴が膵頭十二指腸切除術後出血に及ぼす影響

[演者] 中村 広太:1
[著者] 赤堀 宇広:1, 木下 正一:1, 長井 美奈子:1, 庄 雅之:1
1:奈良県立医科大学附属病院 消化器・小児外科・乳腺外科

【目的】膵頭十二指腸切除術(PD)において術中術後出血は懸念すべき合併症であり,時に深刻な経過をたどる.近年の医療情勢の変化により,抗血栓剤服用患者は増加しているが,これら薬剤の服用が膵頭十二指腸切除術の周術期合併症に与える影響についての報告は少ない.今回,抗血栓剤の投与が膵頭十二指腸切除術の手術成績及び術後出血,その他合併症の発症に与える影響について検討した.【対象と方法】2007-13年に施行したPD 254例を対象とした.初診時に抗血小板薬,抗凝固薬を含めた抗血栓剤を服用していた35症例(13.8%)を服用群,他の219例を対照群とし,両群の臨床病理学的因子および術後成績,予後を比較検討した.抗血栓剤の内訳は,抗血小板剤単剤19例,抗凝固剤単剤5例,多剤併用が11例であった.【結果】年齢中央値68歳,男女比151:103,原疾患は膵癌116例,他138例であった.背景因子では,服用群は対照群に比し,有意に高齢(71.5 vs. 66.4歳,P=0.005)であった.術中因子では,出血量,術中輸血率,手術時間には差を認めず,抗血栓剤服用による術中リスクの増加は確認できなかった.術後出血(≥ISGPS Grade A)は,服用群で有意に高率(14.3 vs. 3.7%,P=0.021)であり,さらに術後出血(≥ISGPS Grade B/C)でも,服用群で高率であった(11.4 vs. 2.28%,P=0.023).術後出血全症例(13例)の内訳は,消化管出血7例,腹腔内出血6例であった.その他の術後合併症では,血管関連イベント,膵液瘻(Grade B/C),腹腔内膿瘍,Clavien-Dindo(≥IIIa)では両群間で差を認めなかった.術後在院日数は服用群で有意に長かった(41.5 vs. 28.5日,P=0.025)が,各原疾患毎の長期予後は両群間で差を認めなかった.次に術後出血のリスク因子を解析した.単変量解析では,抗血栓剤服用歴(P=0.021),術中出血量(P<0.001),手術時間(P=0.033),術中輸血(P=0.047)が有意なリスク因子であった.さらに多変量解析では,抗血栓剤服用歴(OR:4.1, P=0.040),出血量(OR:8.0, P=0.019)が有意な独立因子であった.また,血栓剤服用群35例を検討すると,術後出血の割合は,抗血小板剤単剤,抗凝固剤単剤,多剤併用で,各々5.3%,20.0%,27.3%であり,頻度に差がみられた.【結論】今回,抗血栓剤服用歴がPD術後出血の有意な独立危険因子であることが明らかとなった.特に多剤併用例等の高リスク症例では,周到な周術期管理の重要性が示唆された.
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