演題

潰瘍性大腸炎に対する外科治療の現況

[演者] 小金井 一隆:1
[著者] 辰巳 健志:1, 二木 了:1, 黒木 博介:1, 小原 尚:1, 木村 英明:2, 杉田 昭:1
1:横浜市立市民病院 炎症性腸疾患科, 2:横浜市立大学附属市民総合医療センター 炎症性腸疾患(IBD)センター

潰瘍性大腸炎(UC)では新たな内科治療の登場によって,手術例の術前治療経過が変化しつつあり,手術率は減少したともされる.一方では,本邦のUC患者数は18万人を超えて増加しており,救命やQOL改善のために手術を要する例も多い.
UCに対する手術術式のうち,結腸全摘,回腸直腸吻合は比較的簡便で術後排便機能が良好であるが残存直腸の癌化が問題で,現在ではほとんど行われなくなった.大腸全摘,回腸永久人工造設術は,高齢などの肛門機能低下例や下部直腸癌合併例などに施行される.
現在では,大腸全摘,回腸嚢肛門吻合術あるいは肛門管吻合術が標準術式で,回腸嚢はJ型が最も多く用いられる.前者は直腸粘膜を抜去し経肛門的に手縫い吻合を行い,原則として分割手術となるものの,根治性が高い.後者は器械吻合で1期手術も可能で,術後に便の漏れが残る症例が少なく,排便機能が良好である.当科では後者を主に行い,残る直腸粘膜を少なくするため,後壁の切離線を歯状線に近づけている.両術式とも腸閉塞,回腸嚢炎などの術後合併症があるものの,一年後の一日排便回数は5~6回程度で,免疫を抑える内科治療が中止でき,90%以上の症例で日常生活や食事などの制限がなくなり,10年後の回腸嚢機能率は90%以上と高い.
近年のUC症例の臨床像の変化が術式にも影響を与えている.手術適応では難治例が全体の50%以下となり,癌またはhigh grade dysplasiaが20%程度まで増加した.また,高齢化に伴いUC手術例にも高齢者が増えてきた.難治例に対する術式は回腸嚢肛門吻合か肛門管吻合術が第一選択で,後者は一期手術が行える場合も多い.重症,劇症例は貧血,低アルブミン血症などを伴い全身状態が不良で,ステロイドと免疫を抑える薬剤を使用した後に手術を行う症例が増加し,術後合併症も考慮した分割手術が選択され,全身状態の改善後に回腸嚢肛門(管)吻合術が施行されることが多い.癌またはhigh grade dysplasia合併例では病変の多発や認識できていない病変の存在から回腸嚢肛門吻合術が選択されることが多い.高齢の手術例では,肛門機能やADLの低下のため永久人工肛門造設術が選択される場合が多い.術後は死亡例もあり,肺合併症,感染症などに注意が必要である.
潰瘍性大腸炎に対する標準術式は確立されたが,UC手術例の臨床像は変化しつつある.個々の症例の状態に合わせた適切な術式を選択することが重要である.
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