演題

RS3-140-13-1

門脈圧亢進症における脾臓の線維化と脾摘の意義

[演者] 飯室 勇二:1,2
[著者] 矢田 章人:2, 望月 理玄:1, 鈴木 修:1, 岡田 敏弘:2, 藤元 治朗:2
1:韮崎市立病院 外科, 2:兵庫医科大学医学部 肝・胆・膵外科

近年,抗ウイルス薬(DAA)の登場により慢性C型肝炎治療は一変したが,ウイルス排除後に門亢症が改善しない症例や線維化に起因すると考えられる肝癌発症例が存在する.また,超音波計測による脾臓硬度と門脈圧亢進の程度はよく相関し,静脈瘤破裂リスクの指標とされる.しかし,脾硬度に反映される脾臓の組織変化に関しては不明な部分が多く,門亢症の不可逆性と関連している可能性がある.今回,系統的報告の乏しい門亢症における脾臓の線維化に注目し,門亢症に対する脾摘の意義を考察した.【方法】門亢症を合併するC型慢性肝炎・肝硬変症例に対して脾摘術(腹腔鏡下,一部開腹下)が施行された42例において,線維化を中心に脾臓(特に赤脾髄)の組織学的検討を行った(後ろ向き観察研究).また,脾臓の線維化程度と術前脾臓体積・血小板数などとの比較検討を行った.【結果】既報同様,脾摘後に血小板数の著増に加え,PT活性・S-Alb値の改善がみられた.また,脾摘後観察中の肝癌発症例(ウイルス未排除例)の非癌部肝組織では,脾摘時の肝楔状生検と比較して,線維化が著明に改善していた.さらに,胃静脈瘤並存の高度門亢症例では,脾摘後静脈瘤の著明な改善が得られた.脾臓組織の検討では,軽度から中等度の門亢症例の赤脾髄で,うっ血に伴う脾洞内皮の増生と脾索の狭小化が確認され,高度の門亢症例では,脾洞内皮の増生に加え脾索における著明な線維化(線維性コラーゲンの増生)が確認され,この線維化は赤脾髄の莢動脈を中心に脾索全体に向かって伸展する傾向がみられ,脾索の線維化領域には,α-SMA陽性細胞の増殖が認められた.脾索線維化の程度は,術前脾臓体積と正の・血小板数と負の相関を認め,門亢症に伴う脾洞内皮の増生に引き続き,線維化が次第に進展していく現象が推測された.【考察】門亢症の進行に伴い,脾臓・赤脾髄における線維性コラーゲンの増生が確認され,高度門亢症における脾硬度上昇への関与,および肝炎ウイルス排除後の門亢症不可逆性への関与が示唆された.つまり,肝炎ウイルス排除後の緩やかな肝線維化の改善により,脾臓のうっ血および脾洞内皮の増生は改善する可能性があるが,高度に進行した赤脾髄の線維化は不可逆性の可能性が高い.DAA登場後の現時点においても,肝予備能改善効果および門亢症改善効果の面から,高度門亢症の脾腫に対する脾摘術は合理的治療である可能性が高い.
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