演題

大動脈周囲リンパ節転移陽性胃癌に対する術前化学療法後大動脈周囲リンパ節郭清の意義と予後因子

[演者] 大橋 学:1
[著者] 比企 直樹:1, 江藤 弘二郎:1, 井田 智:1, 熊谷 厚志:1, 布部 創也:1, 佐野 武:1, 山口 俊晴:1
1:がん研究会有明病院 消化器外科

【背景と目的】胃癌の予防的な大動脈周囲郭清(PAND)は,大規模な第III相試験で意義がないことが証明された.しかし,大動脈周囲リンパ節(PALN)に転移を伴う胃癌に関しては,SP療法による術前治療(NAC)後にPANDを行うことで良好な予後が得られており,現在は暫定的な標準治療となっている.今回我々は,実地診療でのPALN転移陽性胃癌におけるNAC後手術の成績と予後に関わる因子を分析し,PALN陽性胃癌に対するPANDの意義を考察した.
【患者と方法】2005年4月から2016年12月までの間,当科で臨床的にPALN転移陽性と診断され,NAC後に手術を施行しR0が得られた患者は34名(男性23名,女性11名,年齢中央値67歳)であった.CTでPALN転移と診断され,肝転移,腹膜転移,他の遠隔転移がないことが確認された患者に各種のNACを行い,その後に手術を施行した.手術は胃切除術とD2郭清を行い,PANDに関しては完全郭清,あるいは不完全郭清(サンプリング)を行った.周術期成績と予後,予後因子を後方視的に分析した.
【結果】NACはSPが22名,XPが5名,SOXが3名,その他が4名であった.NACの奏効割合は65%であった.手術術式は全摘,幽門側胃切除とも17名に施行された.PANDは完全郭清が20名,不完全郭清が14名に行われた.手術時間中央値は310分,出血量中央値は630 gであった.術後の合併症はClavien-Dindo 分類のGrade II以上が43%に認められた.病理診断でPALNに転移があった患者は10名であった.主病巣の病理学的効果判定は1aが16名,1bが6名,2が8名,3が2名であった.全例の3年生存率は67.5%,3年無再発生存率は35.2%であった.因子別の予後の比較では,NAC後にPALNが10ミリ以上,病理学的なPALN転移陽性(特に3個以上の転移),原発巣の病理学的効果判定が1aであると予後不良であった.PANDの程度では統計学的な差はなかったが,完全郭清群で不良であった.これまで15名の再発が確認された.PALN不完全郭清の患者では1名にPALNの再発を認めた.
【結論】臨床的にPALN転移の胃癌では,NAC後にも画像的,病理学的にPALN転移が残存する場合は予後不良である.また,PANDを完全郭清とすることが予後を改善する傾向はなく,不完全郭清例にPALN再発が多いこともない.以上から,PALN転移陽性胃癌に対しては,NAC後にPALNを完全郭清する手術をする意義は乏しく,転移のあった部位に限定したサンプリングでステージングのみにとどめてよい可能性がある.
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