演題

RS1-41-15-1

消化器癌腹膜播種再発予防を目指した,RVD制御での相剰的殺腫瘍効果による腹腔内低浸透圧洗浄療法の開発

[演者] 山里 有三:1
[著者] 塩崎 敦:1, 小菅 敏幸:1, 工藤 道弘:1, 市川 大輔:1, 小西 博貴:1, 小松 周平:1, 藤原 斉:1, 岡本 和真:1, 大辻 英吾:1
1:京都府立医科大学附属病院 消化器外科

消化器癌の中でも腹膜播種再発は未だに予後不良であり,腹腔内浮遊癌細胞の制御,腹膜播種再発予防を可能とする新たな治療方法の開発が求められている.一方で,低浸透圧刺激は癌細胞内への水流入を介した細胞破裂を誘導し殺腫瘍効果を示すとされ,腹腔内蒸留水洗浄は浮遊癌細胞への殺腫瘍効果および腹膜播種の予防が期待されている治療方法である.しかし,細胞に低浸透圧刺激を加えると膨張後に通常容積に戻ろうと容積を減少させるregulatory volume decrease(RVD)という現象が生じ,破裂せずに生存する可能性がある. 我々は, これまでにRVD制御を併用した腹腔内低浸透圧洗浄の開発を目指し,低浸透圧刺激による殺腫瘍効果,さらにRVD抑制併用低浸透圧刺激による殺腫瘍効果の増強効果の検証を行ってきたので報告する.
方法:ヒト食道癌,胃癌,大腸癌,膵癌,肝癌細胞株を用いて,低浸透圧刺激時にRVDに関わるとされるK+, Cl-, water channel各々に対する阻害剤(以下,RVD阻害剤)を併用し,細胞形態および容積の変化をhigh speed cameraに接続した位相差顕微鏡,electric volumeが測定可能なflow cytometerで観察した.また殺腫瘍効果として低浸透圧刺激後に再培養を行い,48時間後の細胞数を測定して検証した.さらにマウスでも同条件での腹膜播種形成阻害作用の検証を行った.
結果:蒸留水を暴露すると,すべての癌細胞で暴露直後から膨張し10分程度で細胞は破裂し,再培養実験では時間依存性にviabilityの有意な低下を認めた.一方で,等張より1/4から1/8程度のmildな低浸透圧では細胞はRVDが生じ,再培養実験でもsevereな低浸透圧条件と比較して有意な殺腫瘍効果の減弱が観察された.一方で,mildな低浸透圧にRVD阻害剤を併用するとRVD抑制が観察され,再培養実験でも殺腫瘍効果の増強が観察された.マウスの腹腔内腫瘍形成は蒸留水の腹腔内投与により有意に腫瘍数,重量,体積は減少した.
考察:蒸留水暴露の癌細胞への殺腫瘍効果はin vitroで確認できたが, これまでの検証で腹腔内蒸留水洗浄後の洗浄液の浸透圧は54.7mOsmまで上昇することが判明しており,同浸透圧ではRVDが起こり十分な殺腫瘍効果を得られない可能性がある.今回,RVD阻害剤を併用することでmildな低浸透圧でも高い殺腫瘍効果が得られることが確認できた.現時点でRVD阻害剤の臨床応用は副作用のため困難であるが,安全な薬剤が存在すれば腹膜播種予防の有用な治療法の一つになり得ると思われた.
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