演題

革新的食道癌治療の開発における重粒子線治療のあらたな可能性

[演者] 磯崎 由佳:1,2
[著者] 安田 茂雄:1, 阿久津 泰典:2, 川城 壮平:1, 岡田 直美:1, 辻 比呂志:1, 鎌田 正:1, 山田 滋:1, 松原 久裕:2
1:重粒子医科学センター病院 外科, 2:千葉大学大学院 先端応用外科学

【はじめに】本邦における高度進行症例に対する治療法の開発は,主に術前治療法の改善を中心に進められてきており,従来治療のモディファイに留まっているのが現状である.当院はこれまでにない革新的治療の開発を目指し,線量の集中性と高い生物学的効果が特徴である重粒子線の食道癌への応用をテーマに研究を進めてきた.今回,世界唯一の食道癌に対する術前重粒子線療法のI/II相試験(HIMAC0301)の結果とともに,現在進めている術前化学重粒子線療法のI/II相試験(HIMAC1206)の進捗を報告する.
【方法】2004年から施行した術前重粒子線治療のI/II相試験(HIMAC0301:Akutsu Y.et.al. J Surg Oncol. 2012 Jun 15;105(8):750-5)の結果を踏まえ,重粒子線と化学療法を組み合わせることで更なる治療成績の向上が期待できると考え,2013年より術前FP併用重粒子線治療のI/II相試験(HIMAC1206)を開始した.今回,両試験の進行症例に着目し,治療成績を解析した.単独照射群(HIMAC0301)において現試験線量(33.6GyE以上)で治療したStage II/III症例は11例,FP(d1,d22 5FU/CDDP 700/70 mg/m2)併用照射群(HIMAC1206)は9例であった.照射終了日より4-8週後に標準的手術を施行した.
【結果】単独照射群の観察期間中央値は57.6か月(1-130か月),FP併用照射群16.6か月(4-41か月)であった.術前肝転移を認めた1例を除き,R0症例が95%であった.切除例のうち,単独照射群はpCR 5例(45%),病理学的奏効率(組織学的効果判定がGr2以上の症例の割合) 72%で,FP併用照射群はpCR 4例(50%),病理学的奏効率100%であった.単独照射群の生存期間中央値は109か月であった.FP併用照射群では再発,死亡は1例も認めていない.一方,単独照射群におけるCTCAE v3.0のGrade3以上の遅発性有害事象は皆無(0%)で,FP併用照射群は3例に認めたが,いずれも重粒子線照射が直接的な原因ではなかった.
【結論】化学重粒子線治療により極めて良好な局所制御を認め,有害事象も非常に少なかった.重粒子線の高い生物学的効果と線量集中性により,高度進行食道癌の劇的な成績向上が期待できると思われる.
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