演題

便失禁に対するTJ-100大建中湯の効果

[演者] 安部 達也:1
[著者] 鉢呂 芳一:1, 小原 啓:1, 菱山 豊平:1, 國本 正雄:1, 村上 雅則:2
1:くにもと病院 肛門外科, 2:くにもと病院 消化器内科

【背景】内肛門括約筋(internal anal sphincter: IAS)は直腸下端の輪状筋が発達した平滑筋から成り,下腹神経および骨盤神経の支配を受けて主に安静時における肛門の禁制を保っている.IASの機能は加齢や経膣分娩のほか,直腸肛門部の手術や骨盤臓器に対する放射線治療によっても障害される.本邦における便失禁診療の実態調査報告によると,IASの機能低下は便失禁の原因の35%を占め最多とされる.IASは不随意筋であるため,骨盤底筋体操やバイオフィードバック療法などの随意的な訓練療法による強化は困難で,厚さが5mm程度と薄いため括約筋形成術の成績も不良である.そのためIAS不全に対する治療法は不足している.【目的】大建中湯(TJ-100)に含まれるhydroxy-α-sanshoolとhydroxy-β-sanshoolは,消化管の平滑筋を収縮させる作用を有することが知られている.今回我々は,IAS機能の指標とされる肛門管最大静止圧(maximal resting pressure: MRP)の低下した便失禁患者にTJ-100を投与し,MRPが上昇するか検討した.【対象】2011年4月から2015年9月に便失禁を主訴に当院を受診してTJ-100単剤による治療を行った症例のうち,治療前のMRPが低値(< 50 mmHg)であった183例(女性144例,平均74歳)を対象とした.【方法】TJ-100はエキス顆粒7.5g(1日量)を3回に分けて食前に経口投与した.評価項目は便失禁スコア(Cleveland Clinic Incontinence Score: CCIS),MRPおよび肛門管電流感覚閾値とし,治療前と治療開始後1カ月のデータを比較した.【結果】対象の便失禁タイプは,漏出性便失禁が126例(69%)と最多で,混合性51例(28%),切迫性6例(3%)と続いた.便失禁の原因は,分娩括約筋損傷(27%),内肛門括約筋変性症(16%),特発性(15%)などが多かった.CCISの平均±標準偏差は,治療前の11.0±3.9から治療後には8.1±4.9に改善した( P < 0.001).MRP(mmHg)は治療前の26.5±9.6から32.6±13.3に上昇した( P < 0.001).肛門管電流感覚閾値(mA)も2.0±2.5から1.2±1.7に改善した( P < 0.01).TJ-100による副作用は特に認めなかった.【結語】今回の結果からTJ-100が便失禁症状を軽減するとともに,低下したIAS機能を回復させる可能性が示唆された.
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