演題

RS1-20-10-5

III型食道裂孔ヘルニア術後食道炎の検討

[演者] 野村 務:1
[著者] 松谷 毅:1, 萩原 信敏:1, 藤田 逸郎:1, 金沢 義一:1, 中村 慶春:1, 柿沼 大輔:1, 太田 惠一朗:1, 宮下 正夫:2, 内田 英二:1
1:日本医科大学付属病院 消化器外科, 2:日本医科大学千葉北総病院 外科

<はじめに>III型食道裂孔ヘルニアでは胃食道逆流が原因であるI型と異なり,胃が縦隔内へ嵌入して食道を圧排することによる通過障害を訴えることが多い.従って術前の上部消化管内視鏡検査で食道炎を認めない症例も多く,一方で術前に認められなかった食道炎が術後に出現する場合もある.当施設での経験を報告する.<対象と方法>当施設で腹腔鏡下逆流防止術を行ったIII型食道裂孔ヘルニア患者24例(2007.1~2016.6,男性8例,女性16例,平均年齢77.3歳)を対象として症状,術前後の内視鏡所見,PPI投与の有無などを検討した.術前の内視鏡所見としてGrade M以下は14例,Grade A 7例,Grade B 3例.術前の主訴としては嚥下障害が21例,逆流2例,胸やけ1例.全例とも紹介患者であり,20例は前医でPPIを処方されていた.9例は嚥下障害のために緊急入院した後当科を紹介され手術を受けている.噴門形成はNissen 3例,Toupet 20例,Dor 1例.食道裂孔はsimple closureが5例,メッシュによる補強が19例,うちParietexTM Composite Meshを7例にVENTRALIGHT™ ST Meshを12例に用いた.<結果>手術時間は210.8分,出血量は26.5ml,周術期に重篤な合併症は認めず,術後平均在院日数は8.1日であった.術後通過障害はnone/mildが16例,moderateが8例,患者満足度はexcellent/goodが23例,fairが1例であった.当院にて経過観察を行い,術後3カ月以降に内視鏡を施行している症例は24例中14例であったが,その中で4例において内視鏡的に食道炎の所見の増悪を認め,うち1例は術前Grade Nから術後Grade Cと著明な増悪であり術前にはなかった強い胸やけを訴えた.食道炎の増悪した4例を含め術後PPIを9例に投与しており現在患者の症状はコントロールされている.<まとめ>III型食道裂孔ヘルニアではI型と病態が異なり縦隔内に嵌入していた胃が手術により腹腔内に戻ると,胃の圧排による食道の通過障害がなくなるが新たに胃食道逆流が生じて食道炎を起こすと考えられる.したがって本疾患では噴門形成を行っても術前に認められなかった食道炎が発生する可能性があり,それを念頭において手術に臨む必要があると考えられた.
詳細検索