演題

成人肝移植後消化管障害に対する大建中湯の有効性に関する多施設共同二重盲検無作為化比較試験

[演者] 海道 利実:1
[著者] 篠田 昌宏:2, 猪股 裕紀洋:3, 八木 孝仁:4, 赤松 延久:5, 高田 泰次:6, 大段 秀樹:7, 嶋村 剛:8, 小倉 靖弘:9, 上本 伸二:1
1:京都大学大学院 肝胆膵・移植外科学, 2:慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科, 3:熊本大学小児外科・移植外科, 4:岡山大学大学院 消化器外科学, 5:東京大学大学院 人工臓器・移植外科学, 6:愛媛大学医学部 病態制御部門外科学講座(肝胆膵・移植外科学分野), 7:広島大学大学院 消化器・移植外科学, 8:北海道大学臓器移植医療部, 9:名古屋大学大学院 移植・内分泌外科学

【目的】近年,術後早期回復プログラムであるERAS®(Enhanced Recovery After Surgery)の概念が種々の外科手術に導入されつつある.しかし,肝移植は早期回復阻害要因が多く,ERAS®プロトコールと対極にある.なかでも術後早期経口摂取は早期回復にとって重要な因子であるが,腸管浮腫や腸管麻痺を併発しやすく,早期栄養摂取に悪影響を及ぼす.そこで,成人肝移植後消化管障害に対するTJ-100ツムラ大建中湯の有効性を検討する目的で,多施設共同二重盲検無作為化比較試験を施行した.
【方法】全国14施設の成人生体または脳死肝移植施行患者.術前に最小化法を用い大建中湯投与群(大建中湯群)とプラセボ投与群(対照群)にランダムに割り付けた.割付調整因子は,肝移植の種類(生体・脳死),体重,年齢,施設の4項目.経験的に肝移植術後7日目の経口・経腸摂取カロリー量の平均値は約1,000kcalであり,大建中湯投与による増加量を500kcalと仮定し,αエラー0.05,power80%で,各群47例必要.不適格例などの解析除外例を考慮し,目標症例数を各群55例,計110例と設定.術後1日目から14日目まで試験薬を1日3回食前に1回5g経口または経管投与した.腸管運動機能改善薬は併用禁止薬とした.主要評価項目:術後7日目の経口・経腸栄養の総カロリー量と消化器症状.副次的評価項目:経口・経腸栄養の総カロリー量の経時的推移,QOL評価,肝機能,門脈血流量・流速,肝再生率,腹水量など
【結果】予定より2か月早く2016年3月24日で登録終了.登録112例中,移植に至らなかった症例などを除く104例(大建中湯群55例,対照群49例)を解析.主要評価項目は,両群間で有意差を認めず.副次的評価項目において,大建中湯群は対照群に比べ,術後の経口・経腸栄養総カロリー増加率が有意に高率(p = 0.023)で,門脈血流量や流速が有意に高値(各々,p = 0.025, p = 0.014).
【結語】大建中湯は,肝移植後早期経口・経腸摂取カロリー量増加に有用で,ERASに寄与する.
詳細検索