演題

RS1-20-10-2

Heller-Dor手術が有効でなかった症例に対するPOEMの臨床経験

[演者] 塩飽 洋生:1
[著者] 山下 兼史:1, 中村 廉:1, 大宮 俊啓:1, 岡田 浩樹:1, 吉村 文博:1, 二村 聡:2, 井上 晴洋:3, 長谷川 傑:1
1:福岡大学病院 消化器外科, 2:福岡大学医学部 病理学講座, 3:昭和大学江東豊洲病院 消化器センター外科

はじめに
Heller-Dor手術は,食道アカラシアに対する根治治療である.しかしながら,術後に症状が再燃する症例も中には存在し,従来までは,そのような症例については,再手術もしくは内視鏡的バルーン拡張術による追加の治療が行われてきた.再手術に関しては,前回の操作の影響で手技が困難になる場合が存在した.また内視鏡的バルーン拡張術については,効果の確実性,恒久性という点で問題があった.POEMは2008年に井上らによって報告された新しい内視鏡治療である.Heller-Dor手術を施行した症例に対しても,前回の筋層切開の対側で手技を行えば,過去の治療の影響を受けることなく,通常通りのPOEMを完遂することができる.また開腹手術では置くことができない長い筋層切開を口側に置くことも可能である.当院ではこれまで食道アカラシアに対し,190例POEMを行ったが,そのうち10例はHeller-Dor後のPOEMであった.その手技の実際と治療成績について報告する.
対象と方法
2011年9月から2016年11月まで190例のPOEMを施行した.うち10例(5.8%)はHeller-Dor手術後のPOEMであった.これらの治療成績を後ろ向きに検討した.初回の手術の後に症状が再燃した理由については,問診,内視鏡検査,食道造影検査,食道内圧検査,24時間PHモニタリング検査を行い,責任部位の同定を行った.
結果
Heller-Dor手術後のPOEMは男性6例,女性4例,平均年齢は54.8±15.4歳であった.症状が再燃した原因として,LES部が責任部位であったものは8例,食道体部が原因であったものは1例,その他の理由が1例であった.POEMは全て後壁切開で行われ,途中で治療を断念した症例は認めなかった.平均筋層切開長は,食道側14.3±6.1cm,胃側2.8±1.0cm,平均手術時間は136.5±35.6分であった. POEMに関連した偶発症は認めなかった.IRPは術前22.1±8.6 mmHg,術後13.6±5.4mmHgであった.またEckardtスコアは術前4.1±2.5 ,術後3か月目0.67±1.1,術後12カ月後1.0±1.2であり(P<0.05),全症例においてPOEMにより症状が改善した.
結論
Heller-Dor手術後のPOEMの治療成績は良好であった.開腹による再手術とは異なり,適切なルートで手技を行えば,癒着もなく,長い筋層切開が可能である.内視鏡的バルーン拡張術と比べても,効果の確実性,恒久性という点で大きな利点がある.POEMは,Heller-Dor手術で十分な効果が得られなかった症例に関しても,大変有効な治療法である.
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