演題

O2-57-6-3

人工透析患者における下部消化管穿孔にエンドトキシン吸着療法の昇圧作用を利用した取り組み

[演者] 山本 澄治:1
[著者] 松本 尚也:1, 遠藤 出:1, 吉田 修:1, 久保 雅俊:1, 宇高 徹総:1, 水田 稔:1
1:三豊総合病院 外科

下部消化管穿孔の致死率は依然として高く10.6~18.6%とされる.術前の人工透析はさらに予後不良とされ,死亡率は27.3~44.4%と高く,以前の我々の報告でも独立した予後不良因子であった.維持透析患者に発症した下部消化管穿孔の予後改善が急性腹膜炎手術症例全体の死亡率改善に大きく影響すると考えられる.エンドトキシン吸着(PMX)療法の国際的な臨床上の有用性はいまだ確立していない.われわれも基本的に下部消化管穿孔に対してPMX療法を用いておらず,迅速な感染源の除去と術前からの輸液負荷に重点をおいた集学的治療にて良好な結果を得てきた.一方で,PMX療法の予後改善効果には議論があるものの,血圧上昇効果の有意性は示されている.人工透析患者は蓄積する有害物質や水分の体外への排出に透析が不可欠であるが,下部消化管穿孔術後は多量の有害物質が蓄積していき,同時にその降圧作用により人工透析を施行できない負のサイクルに陥ることがある.そこでわれわれは,この負のサイクルを断ち切る目的で,PMXのエンドトキシンをターゲットとした治療ではなくその昇圧作用を利用することを試みた.今回この有効性を後方視的に検討した.
2008年1月から2016年12月までの下部消化管穿孔症例102例を対象とした.透析患者は10例で,3例(30%)の死亡例を認めた.透析再開に必要な血圧が維持できずPMXを利用した症例は2例で,いずれもPMX導入直後より平均血圧の上昇を認め生存が得られた.PMXを利用し始めた2015年1月以降を後期,それ以前を前期として予後を比較すると,前期,後期の死亡率はそれぞれ60 %(n=5)と0%(n=5)で有意な改善が認められた.PMX利用症例と死亡例のSOFA scoreの平均はそれぞれ6点,5.7点と有意差は認めなかった.これにより透析患者以外も含め下部消化管穿孔術後全体での死亡率は前期,後期でそれぞれ 10.8%と 7.1%で有意に改善が得られた.透析患者にPMXは導入しやすく,血圧上昇作用を利用することで透析再開から早期に有害物質除去が可能となり生存率の改善につながる可能性が示唆された.
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