演題

O2-86-13-6

胚盤胞補完法を用いた臓器作出の試み

[演者] 高橋 佑典:1
[著者] 大植 雅之:1, 三吉 範克:1, 安井 昌義:1, 杉村 啓二朗:1, 文 正浩:1, 小林 省吾:1, 高橋 秀典:1, 大森 健:1, 宮田 博志:1
1:大阪府立成人病センター 消化器外科

ES細胞やiPS細胞と言った多能性幹細胞を用いた再生医療は,非常に大きな期待を寄せられる技術の一つである.なかでもin vitroでの多能性幹細胞の様々な細胞への分化の技術は日進月歩であり,ヒト多能性幹細胞由来の心筋細胞,網膜細胞,肝細胞,膵島などは,それぞれの数多くの臓器機能不全に対する細胞治療に応用されることが期待される.
一方で,実際に体内で機能している臓器は単なる細胞の塊ではなく,3D構造を持ち,様々は細胞種が相互作用を行うことで機能している.現在の技術ではこのような3次元構造を持った臓器をin vitroで作り出すことは困難である.
そこで,我々は胚盤胞補完法という技術を用いて動物体内でヒト臓器を作り出す技術を開発している.胚盤胞補完法については,まず1993年にChenらが報告した.Chenらは免疫不全マウスの胚盤胞に正常のES細胞を注入し,免疫不全マウスと野生型マウスのキメラマウスを作成することで,ES細胞由来の免疫細胞により宿主側の免疫不全の表現型を補完できることを明らかにした.われわれはこの方法を固形臓器の作出に応用した.まず,膵臓を欠損するノックアウトマウスの胚盤胞に,野生型のマウスES細胞,iPS細胞を注入することで,キメラマウスを作成.そのキメラマウスの膵臓は注入されたES細胞,iPS細胞由来であることが確認できた.つまり完全にES細胞/iPS細胞由来の膵臓をマウスの体内に作り出すことに成功した.さらに,マウス・ラットの異種間においてキメラを作成することにも成功しており,これらの技術を組み合わせることでマウス体内にラットES細胞,iPS細胞由来の膵臓を,またラット体内にマウスES細胞,iPS細胞由来の膵臓を作り出すことも可能であった.この技術をさらに発展させ,ヒト臓器をブタやヒツジなどの大動物の体内に作成し移植医療に用いることを目標に研究を続けている.
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