演題

O2-85-13-3

マイクロアレイ解析,網羅的脂質解析によるNAFLDを背景とした肝細胞癌の増殖機構の解明

[演者] 武田 真:1
[著者] 坂口 孝宣:1, 黎 明宣:1, 古橋 暁:1, 木内 亮太:1, 平出 貴乗:1, 柴﨑 泰:1, 森田 剛文:1, 菊池 寛利:1, 今野 弘之:1
1:浜松医科大学医学部 外科学第二

(背景・目的)Non-alcoholic fatty liver disease(NAFLD)の増加に伴い,同疾患から発生する肝細胞癌(HCC, N-HCC)の分子生物学的特徴の解明は重要である.我々は,HCC切除検体の脂質と脂質関連遺伝子の網羅的解析,細胞株実験により,N-HCC増殖機構への脂質の関与を研究した.
(方法)倫理委員会承認及び患者同意のもと,HCC切除検体を準備した.RNAマイクロアレイを用い,N-HCC及びC型慢性肝炎由来HCC(C-HCC)切除検体の遺伝子発現(各n=3)を比較検討し,N-HCCに関連する遺伝子を同定,それらの発現をqRT-PCR法で比較検討(各n=10)した.ヒトHCC細胞株(HepG2, Huh7, HLE)のN-HCC関連遺伝子mRNA・蛋白発現を解析し,NAFLD環境を模倣すべく1価不飽和脂肪酸(オレイン酸:OA, C18:1)含有培地でのcell proliferation,アポトーシス関連蛋白発現,N-HCC関連遺伝子knock down (KD)の影響を評価した.OA添加,N-HCC関連遺伝子knock down (KD)による細胞内リン脂質組成変化を液体クロマトグラフィー質量分析法で解析した.
(結果)マイクロアレイGene set enrichment analysisで,lipid-binding, membrane-binding-vesicle遺伝子caveolin(cav)-1,2のN-HCCでの発現上昇(各々1.93, 1.81倍)を認め,N-HCC関連遺伝子と同定した.qRT-PCR法でもcav-1,2の有意な発現上昇をN-HCCで確認した.細胞株のcav-1,2発現は,HepG2, Huh-7, HLEで無,中等度,高度であった.全ての細胞株でOA添加によりtriglycerideの増加(多くはOA含有)を認めた.cav-1,2無発現株HepG2はOA添加によって細胞増殖は変化せず,cleaved caspase3 (c-casp3)増加を認めた.Cav-1,2高発現株HLEはOA添加で濃度依存性細胞増殖増加を示し,その増加 はcav-1, 2 KDで抑制された.Cav-1 KD-HLEでもOA添加によるc-casp3発現亢進を認めた.OA添加後にc-casp3発現亢進を認めたHepG2とcav-1 KD-HLEはC18:1 ceramideの増加を認めたが,OA添加後にc-casp3発現なく細胞増殖を認めたHLEではceramideの減少を認めた.
(考察)CaveolinはOAをエネルギー源として取り込み細胞増殖を誘導すると仮定したが,caveolinと無関係に取り込まれるOAから産生されるapoptosis促進因子C18:1 ceramideの生成を抑制することでapoptosisを回避し,細胞増殖を誘導すると考えられた.このapoptosis回避機構の詳細は不明だが,N-HCCに発現するcav-1は脂肪酸が過剰供給される環境での細胞増殖機構に関係している可能性がある.
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