演題
O2-85-13-2
ラット肝切除後感染性肝不全モデルにおける肝細胞有機アニオントランスポーター解析 |
【緒言】近年,ビリルビンや胆汁酸などの有機アニオンの細胞膜輸送を担っている肝細胞膜上トランスポーターの障害が,肝切除後の肝内胆汁うっ滞の直接的な病因となりうることが明らかになってきた.一方で,大量肝切除後に感染が伴った場合に高ビリルビン血症が遷延し,急性肝不全を発症することが肝切除後合併症の問題点のひとつとされている.この病態について,「有機アニオントランスポーター異常」という分子生物学的観点から,肝切除後感染性肝不全時における有機アニオン代謝異常と肝再生不全の機序を明らかにすることが目的である.【対象と方法】週齢6週,180~220 gのSprague-Dawley(SD)雄性ラットを用い,全身麻酔下に開腹し70%肝切除を行った後,lipopolysaccharide(LPS)を下大静脈へ投与した.これをラット肝切除後感染性肝不全モデル(LPS+70%肝切除群)として,その他Sham手術群,LPS単独投与群,70%肝切除群の4群にわけ,それぞれ24,72,168時間後に各々肝組織,全血を採取した.採取した血液からは肝胆道系酵素およびビリルビン測定を行った.肝組織からはRNAを抽出した後マイクロアレイを施行し,遺伝子変動を網羅的に解析した.【結果】70%肝切除群と比較すると,LPS+70%肝切除群においては24時間後のトランスアミナーゼ値と総ビリルビン値,および胆汁酸値高値が認められた.マイクロアレイでは,血中のビリルビンを取り込む類洞側トランスポーターであるOATP,血中の胆汁酸を取り込むNtcpにおいて,それぞれ70%肝切除群より減少傾向が認められた.【結語】肝切除後肝再生期に感染を合併した場合,肝切除のみの場合よりも肝細胞膜上の有機アニオントランスポーター障害が増強され,高ビリルビン血症が遷延する可能性が示唆された.