演題

O2-85-13-1

Cytochrome P450 3A4遺伝子発現低下は肝細胞癌切除後早期再発の予測因子である

[演者] 蘆田 良:1
[著者] 岡村 行泰:1, 大島 啓一:2, 上坂 克彦:1, 杉浦 禎一:1, 伊藤 貴明:1, 山本 有祐:1, 浦上 研一:3, 楠原 正俊:4, 山口 建:5
1:静岡県立静岡がんセンター 肝・胆・膵外科, 2:静岡県立静岡がんセンター 遺伝子診療研究部, 3:静岡県立静岡がんセンター 診断技術開発研究部, 4:静岡県立静岡がんセンター 地域資源研究部, 5:静岡県立静岡がんセンター

背景と目的:肝細胞癌切除例において,術後早期に再発を経験することはしばしばあるがこれらを遺伝子レベルで予測する因子に関する報告は少ない.当施設では,すべての手術患者を対象に,入手可能な新鮮腫瘍組織を用いて全エキソン解析(WES)と全遺伝子発現解析を実施している(プロジェクトHOPE).今回,肝細胞癌(HCC)切除例においてHOPE解析結果を用いてHCC術後6カ月以内の早期再発を予測する因子について検討した.
対象と方法:解析を終了しているHCC92例を対象とした.腫瘍組織のWESと全遺伝子発現解析を行い,遺伝子変異および発現異常を高頻度に認める遺伝子を抽出した.さらに,対象を早期再発群(E群 n=15)と非早期再発群(NE群 n=77)に分け,抽出した遺伝子および臨床病理学的因子を比較検討し,術後早期再発予測因子につき2項ロジスティック回帰分析を用いて解析した.
結果:男性73例,女性19例,年齢71歳,観察期間中央値19.4ヶ月(1.2-33.7ヶ月),罹患肝炎ウイルスは,HBV15例,HCV31例,肝炎ウイルス非罹患例46例,血清AFP中央値12.0ng/mL,腫瘍径中央値43mm,腫瘍個数単発が72例であった.病理組織学的因子では,膨張性発育が87例,組織学的門脈侵襲は23例,組織学的静脈は22例,肝内転移を18例に認め,UICC腫瘍進行度stageII以上が46例であった.観察期間中36例に再発を認め,再発までの期間中央値は7.2ヶ月(2.3-27.3ヶ月)で再発例の42%(15例)は術後6ヶ月以内に再発を認めた.WESでは,CTNNB1,MUC16およびTP53で腫瘍特異的SNVの出現頻度が高く,それぞれ27%,21%および20%であった.遺伝子発現解析では,腫瘍部で非腫瘍部に対し10倍以上の発現亢進を高頻度に認めた遺伝子は,MYCN(53%),GPC3(50%)及びRAD54L(46%)であった.一方,腫瘍部で非腫瘍部に対し,高頻度に90%以上の発現低下を認めた遺伝子は,PRSS8(64%),CYP3A4(61%)およびEPCAM(57%)であった.単変量解析の結果,腫瘍径74mm以上の症例(p=0.001),組織学的門脈侵襲例(p=0.006),組織学的静脈侵襲例(p=0.006),肝内転移例(p=0.029),UICC腫瘍進行度stageII以上の症例(p=0.022),Cytochrome P450(CYP)3A4の1/10以下の発現低下例(p=0.004)が有意にE群で多かった.多変量解析の結果,肝内転移例 (odds比:6.76,p=0.036),腫瘍径74mm以上(odds比:5.34,p=0.023),CYP3A4の発現低下(odds比:18.18,p=0.021)がE群の独立した危険因子であった.
結語:HCCにおいてCYP3A4遺伝子の発現低下,腫瘍径および肝内転移は早期再発予測に有用である可能性が示唆された.
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