演題

O2-84-13-5

プロスタグランジンE2シグナルはALDH1陽性癌幹細胞様分画の拡大を介して膵腫瘍増大を引き起こす

[演者] 有馬 浩太:1,3
[著者] 石本 崇胤:1,3, 大村谷 昌樹:2, 三宅 慧輔:1,3, 江藤 二男:1,3, 今井 克憲:1, 橋本 大輔:1, 近本 亮:1, 山下 洋市:1, 馬場 秀夫:1
1:熊本大学大学院 消化器外科学, 2:兵庫医科大学医学部 遺伝学, 3:熊本大学国際先端医学研究機構

【背景と目的】慢性炎症は発癌や腫瘍増大の危険因子として知られている.COX阻害薬であるアスピリンの内服が膵癌をはじめ様々な癌種において癌関連死亡を低下させたことから,プロスタグランジン(PG)が癌の増殖を促進させている可能性が示唆された.また,PGの分解酵素15-PGDHの抑制により組織内に蓄積したPGE2は組織幹細胞分画を拡大させることが報告されているが,癌幹細胞に対する役割は明らかになっていない.本研究は膵癌におけるPGE2の組織内蓄積が癌幹細胞分画の拡大を介した膵癌進展機構を明らかにすることである.
【方法】①膵癌根治切除症例121例の切除標本を用いて膵癌幹細胞マーカーALDH1と15-PGDHの免疫組織学的染色を行い,予後との相関を検討した.②膵癌細胞株に15-PGDH阻害剤,ALDH1 siRNAの投与を行い,表現系の変化を評価した.③膵にPanINを自然発症する膵特異的Kras変異マウスに15-PGDH阻害剤の腹腔内投与を行い,腫瘍形成能を評価した.④15-PGDH遺伝子欠損マウスと膵特異的Kras変異マウスを掛け合わせ,表現系を評価した.
【結果】15-PGDHは正常部で発現が高く,癌部で発現が低下していた.また癌部での15-PGDHとALDH1の発現は有意に逆相関を認めた.ALDH1高発現症例は全生存期間(P = 0.0185),無再発生存期間(P = 0.0150)の有意な短縮を認めた.膵癌細胞株に15-PGDH阻害剤投与を行うと細胞内にPGE2が蓄積してALDH1発現を上昇させ,幹細胞関連遺伝子であるSOX2,Nanogの発現上昇を介して増殖能,sphere形成能を亢進させた.またPGE2の細胞内蓄積はEP2/4受容体を介して全トランスレチノイン酸(ATRA)を減少させ,ALDH1発現を上昇させることがわかった.加えて膵特異的Kras変異マウスに15-PGDH阻害剤投与および15-PGDH遺伝子欠損を追加すると,いずれもALDH1発現細胞が増加し,PanIN病変が増大した.さらにこのマウスにATRAの投与を行うとALDH1発現細胞が減少し,PanIN病変の形成抑制を認めた.
【結語】癌抑制遺伝子である15-PGDH発現低下症例は組織内にPGE2が蓄積し,ATRAの減少を介してALDH1発現が上昇し,腫瘍の増殖・進展に関与していた.膵癌15-PGDH低発現症例にはATRAが治療効果を有する可能性が示唆された
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