演題

O2-84-13-4

2型糖尿病長期罹患はE-CadherinのDNA過剰メチル化を通じて膵導管癌の予後を増悪させる

[演者] 齋藤 傑:1,2
[著者] 石戸 圭之輔:1, 工藤 大輔:1, 木村 憲央:1, 脇屋 太一:1, 内田 知顕:1,2, 梅津 誠子:1,2, 水上 浩哉:2, 袴田 健一:1
1:弘前大学大学院 消化器外科学, 2:弘前大学大学院 分子病態病理学

【背景】2型糖尿病 (T2DM) は膵導管癌 (PDC) 発症の危険因子のみならず,予後不良因子としても報告されている.しかしながら,T2DMによるその進展機序は未だ明らかになっていない.E-Cadherinは発現が低下することで癌の浸潤・転移に影響を及ぼすといわれている細胞接着因子であり,その発現調節にはDNA過剰メチル化が関わっているといわれている.DNA過剰メチル化の誘発因子である活性酸素はT2DMにより産生が亢進することから,E-CadherinのDNA過剰メチル化とT2DMとの関連性が示唆されるものの,それを示す報告はない.
【対象と方法】2006年10月から2014年12月までの期間で,弘前大学医学部附属病院においてPDCと診断され手術を施行された109例を対象とした.T2DM罹患期間によりnon-DM (59例) ,short-DM (17例) (発症3年未満) ,long-DM (33例) (発症3年以上) の3群に分類した.手術検体から癌組織および癌近傍正常組織を抽出し,Methylation-specific PCR法によるE-CadherinのDNAメチル化状態解析,免疫組織化学染色による発現解析を施行した.各群の臨床病理学的因子を抽出し,再発,予後を含め比較検討した.
【結果】E-CadherinのDNA過剰メチル化は,癌組織においてnon-DM群で22%,short-DM群で18%,long-DM群で61%に認められ,long-DM群では他2群と比較し有意にDNA過剰メチル化の増加が認められた (non-DM vs long-DM: P<0.001, short-DM vs long-DM: P=0.004) .癌近傍正常組織では,non-DM群で7%,short-DM群で6%,long-DM群で32%と癌組織同様の傾向を示した (non-DM vs long-DM: P=0.002, short-DM vs long-DM: P=0.038) .免疫組織化学染色では,long-DM群において他2群に対し有意にE-Cadherinの発現低下が認められた(non-DM vs long-DM: P<0.001, short-DM vs long-DM: P=0.001) .PDCの全生存率に対する多変量解析では, long-DMが独立した予後不良因子であった (Hazard ratio 1.72, 95%CI 1.01-2.92, P=0.044) .
【結語】T2DM長期罹患によるE-CadherinのDNA過剰メチル化の増加及び,それに伴う遺伝子発現低下が認められた.また,T2DM長期罹患はPDCにおける独立した予後不良因子であることが明らかになった.T2DM合併PDC患者に対する,新たな治療標的としての可能性が示唆された.
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