演題

O2-84-13-3

全人的治療を考慮した膵癌に対するHedgehogシグナル阻害治療の開発

[演者] 大西 秀哉:1
[著者] 山崎 章生:1, 大山 康博:1, 川元 真:1, 中村 雅史:2
1:九州大学大学院 腫瘍制御学, 2:九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学

【背景】
我々は膵癌において癌微小環境である低酸素環境でHedgehog(Hh)シグナル活性化が亢進すること,および,このHhシグナル活性化亢進が膵癌の増殖・浸潤といった膵癌の悪性形質を誘導することを報告してきた.一方で,最近,生体における免疫細胞の重要性が再認識されてきている.
【目的】
低酸素環境で亢進するHhシグナルを標的としたHh経路阻害治療が膵癌の新規治療法となり得るか解析する.また同時に,Hh経路阻害治療が免疫細胞(リンパ球,樹状細胞)に及ぼす影響についても解析し,全人的治療を行う見地からHh経路阻害治療の膵癌新規治療法としての可能性を検証する.
【材料と方法】
標的細胞として4種の膵癌細胞株:AsPC-1,SUIT-2,CFPAC-1,Panc-1を用いた.低酸素環境として1%O2環境とした.Hhシグナル抑制法として,シクロパミン,Smo/Gli1 siRNAを用いた.増殖能は細胞数計測,MTT法,マウスを用いた異種移植実験で,浸潤能はMatrigel浸潤試験で,抗癌剤感受性はFACSによるsub G1計測で,PDL-1発現はFACSで解析した.活性化リンパ球は末梢血単核球より抗CD3抗体,IL-2を用いて7日間培養し誘導した.樹状細胞は末梢血単核球よりIL-4/GM-CSFを用いて7日間培養し誘導した.他家リンパ球増殖刺激能は,WST-1による測定法とタイムラプス撮影法の2法で行った.
【結果】
1)Hh経路阻害治療は膵癌細胞株において,G0/G1 arrestを誘導し増殖を有意に抑制した.またマウスを用いた異種移植実験では腫瘍増殖,腫瘍形成能は有意に低下した.2)Hh経路阻害治療は膵癌細胞株において,MMP活性化低下により浸潤能を有意に抑制した.また,3)Hh経路阻害治療によりS期感受性薬剤である5-FU及びGemcitabineの感受性は低下したが,細胞周期非依存性薬剤であるCDDPの感受性は有意に亢進した.4)Hh経路阻害治療は低酸素環境で膵癌細胞株のPDL-1発現を低下し,リンパ球の抗腫瘍活性を亢進した.しかし,5)Hh経路阻害は,活性化リンパ球の増殖,migration能および癌細胞傷害活性を有意に抑制した.さらに6)Hh経路阻害は,樹状細胞の誘導細胞数,migration能,CD86分子・class I分子発現,貪食能および他家リンパ球増殖刺激能を有意に低下した.
【結語】
膵癌においてHh経路阻害治療は,増殖,浸潤およびPDL-1発現を制御する新規治療法となり得る.しかし,Hh阻害剤により免疫細胞の活性化が低下する可能性を治療の際には十分考慮する必要がある.
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