演題

O2-84-13-2

LC-MS/MS蛋白質絶対定量法による膵癌Gemcitabine感受性解析と,その臨床応用への可能性-前向き観察研究-

[演者] 大塚 英郎:1
[著者] 水間 正道:1, 林 洋毅:1, 中川 圭:1, 森川 孝則:1, 元井 冬彦:1, 内藤 剛:1, 立川 正憲:2, 寺崎 哲也:2, 海野 倫明:1
1:東北大学大学院 消化器外科学, 2:東北大学大学院薬学系研究科 薬物送達学

【背景】膵癌はきわめて予後不良な癌種であり,その治療成績向上のため周術期化学療法などさまざまな集学的治療が試みられている.その化学療法ではGemcitabine(GEM)のほか,S-1やnab-Paclitaxel,あるいはこれらの併用などさまざまな抗がん剤が選択可能であるが,個々の症例における抗がん剤感受性予測は,最適な抗がん剤の選択を可能とし,治療成績向上に大きく寄与することが期待される.GEMの組織移行性・細胞内効果にはdeoxycytidine kinase (dCK)などの代謝酵素やEquilibrative Nucleoside Transporter (ENT)などのトランスポーターが深く関与するとされるが,近年のプロテオミクス技術の進歩に伴い従来定量が困難とされてきたこれらの微量蛋白も生体内での機能を反映する蛋白レベルで高感度に定量することが可能となった.【目的】LC-MS/MS蛋白質絶対定量法により腫瘍組織中の薬物代謝関連蛋白を測定することで,GEM効果予測が可能であるか前向き臨床試験により検証する.【方法】2011年9月~2012年12月に膵癌で切除術(R0,R1)を施行し,同意の得られた連続43症例を本臨床試験に登録した.膵癌組織中のdCKとENTの発現量をLC-MS/MSを用いて絶対定量し,これらの蛋白質発現量と術後治療成績との相関,その発現量からのGEM効果予測の可能性について前向きに検討した.【結果】全症例での術後無再発生存期間(RFS)8.7か月(中央値),全生存期間(OS)24.4か月(中央値)であった.本研究では化学療法の施行について規定を設けなかったが,全症例中31例(72.1%)で術前または術後補助化学療法としてGEMが投与された.術後生存期間よりROC解析を行ないdCK及び ENT発現量にcut off値を設定,それぞれ高発現群と低発現群で治療成績を検討した.dCKは高発現群でRFS(p=0.0049),OS(p=0.029)とも有意に延長することが示されたが,ENTでは高発現群で治療成績の有意な上昇は認めなかった.周術期GEM投与症例での検討で,dCK高発現群はRFS(p=0.0016),OS(p=0.0283)とも有意に生存期間の延長を認めたのに対し,周術期GEM非投与症例では,dCK高発現群と低発現群間で治療成績に有意な差を認めなかった.【結語】本前向き臨床研究より,GEM効果予測予測には腫瘍組織中dCK発現量が重要であると考えられた.LC-MS/MS蛋白質絶対定量法による組織中dCK発現量の測定は,GEM効果予測に基づく周術期化学療法個別化治療への実用化が強く期待されると考えられた.
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