演題

O2-82-13-4

腸内細菌を指標とした大腸癌スクリーニングキットの開発

[演者] 奥村 慎太郎:1,2
[著者] 長山 聡:3, 原 英二:1,4, 坂井 義治:2
1:がん研究会がん研究所がん生物部, 2:京都大学大学院 消化管外科学, 3:がん研究会有明病院 消化器外科, 4:大阪大学 微生物病研究所 遺伝子生物学

【背景】食生活の欧米化や平均寿命の延長により我が国における大腸癌の罹患率および死亡率は年々上昇傾向である.大腸癌は早期発見・早期治療により治癒が見込まれる疾患であるが,大腸癌スクリーニング検査として現在広く行われている便潜血検査の感度は70~80%程度であり,より効果的な診断キットの開発が急務である.一方で近年,次世代シークエンサーを用いることで腸内細菌の遺伝子をメタシーケンスすることが可能となり,従来の方法では困難であった腸内細菌叢の解析が可能となった.そして,特定の腸内細菌が大腸癌発癌に関与することを示唆する研究結果も数多く報告されるようになってきている.そこでわれわれは,既存の便潜血検査に取って代わる,腸内細菌を指標とした新しい大腸癌診断キットの開発を目指すこととした.
【方法】がん研有明病院にて大腸癌患者512名および健常者967名の糞便サンプルを採取した.まず,PCRにて糞便中における細菌の16S rRNA遺伝子の可変領域1および2のアンプリコンを作成し,次世代シーケンサーを用いてこれをシーケンスした.次に,得られたゲノム配列を97%相同性にてoperational taxonomic unit (OTU)にクラスター化した.細菌の16S rRNA遺伝子のデータベースを参照することで各OTUに対応する菌種が同定できるため,われわれは1つのOTUを1つの菌種と近似して扱っている.そして,大腸癌患者群と健常者群のOTUの組成を比較しLinear discriminant analysis with effect size (LEfSe)法を用いて各群に有意に多く存在するOTUを選び出し,これらを組み合わせることで高い感度・特異度を持つ大腸癌診断モデルを構築した.
【結果】現在まだ解析途中のため,今回は男性サンプルの結果のみを示す.大腸癌患者に有意に多いOTUは41種類,健常者に有意に多いOTUは14種類認められた.これらを組み合わせてロジスティック回帰分析により診断モデルを作成した.この診断モデルのreceiver operator characteristic (ROC)曲線を描くと,area under the curve (AUC) 0.95という値が得られた.
【結論】腸内細菌を指標とした大腸癌診断キットは高い感度・特異度を有する有用な検査法となる可能性が高いと考えられた.
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