演題

O2-81-13-3

DPP-IV活性検出プローブによる食道扁平上皮癌の迅速蛍光イメージングに関する研究

[演者] 小野山 温那:1,2
[著者] 坂本 啓:1,2, 三ツ井 崇司:1, 八木 浩一:1, 愛甲 丞:1, 西田 正人:1, 山下 裕玄:1, 野村 幸世:1, 浦野 泰照:2,3,4, 瀬戸 泰之:1
1:東京大学大学院 消化管外科学, 2:東京大学大学院, 3:東京大学大学院, 4:AMED CREST

【目的】
浦野らは,癌細胞で特定の酵素活性が上昇していることに着目し,癌細胞と正常細胞の活性の差を利用した癌検出プローブを開発した.しかし,これまでに細胞やモデル動物を用いた検証はおこなっていたが,実際のヒト組織で有効であるかどうかは不明であった.一方,瀬戸らが診療対象としている食道癌においては,通常の内視鏡観察では早期発見が困難な場合が多く,食道癌を迅速かつ的確に検出する新たな手法の開発が強く望まれている.また,外科手術の剥離操作の際に遺残病変の有無を評価する方法はなく,根治性を高めるためには遺残病変を評価する方法が求められている.そこで今回,食道扁平上皮癌診断のための蛍光プローブを開発し,その有用性を検討した.
【方法】
本プローブは,標的酵素と反応すると加水分解が起こり,分子構造が変化することで初めて蛍光性を有する物質であり,酵素活性の高い癌部位でのみ強い蛍光を発することで高い癌特異性を示す.本研究では,倫理委員会の承認を得て,まず数種類の酵素を標的としたプローブを作成し,ヒト切除検体を用いたスクリーニングを行うことで,食道扁平上皮癌に対して癌特異性の高いプローブを探索し,次に実際にヒトESD検体ならびに手術検体に散布し,臨床応用できるか否か検討した.
【結果】
スクリーニングにより,DPP-IVを標的とするプローブで高い癌特異性を認めた.生検検体を用いた検討(腫瘍部58検体,正常部73検体)では,プローブ散布後5分で, 感度98%,特異度74%,正診率85%と優れた結果を示し,存在診断において十分に有用であると考えられた.ESD検体および手術検体を用いた検討では,蛍光上昇を認める範囲は,ルゴール不染帯と一致し,さらには病理結果ともほぼ一致していたことから,範囲診断にも有用であると考えられた.免疫染色では,癌細胞におけるDPP-IVの高発現を認め,ヒト組織においても本プローブがDPP-IVを標的としていることを確認した.
【結語】
本プローブは,食道癌診断のための新たな技術と成りえると考えられた.今後は,内視鏡下での診断のみならず,外科手術の際の剥離断端評価も視野に更なる検討を重ねていきたいと考えている.また将来的には,胃癌や大腸癌など,他の癌種でも癌特異的に高発現する酵素が発見されれば本技術の応用が可能であり,癌診療の一助として新たな手段となることを期待している.
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