演題

O2-81-13-1

食道扁平上皮癌における静止期癌幹細胞マーカーCD271を用いた血中循環癌細胞の検出

[演者] 奥村 知之:1
[著者] 小島 博文:1, 山口 哲司:1, 三輪 武史:1, 渡辺 徹:1, 関根 慎一:1, 橋本 伊佐也:1, 吉岡 伊作:1, 嶋田 裕:2, 長田 拓哉:1
1:富山大学大学院 消化器・腫瘍・総合外科学, 2:京都大学大学院 ナノバイオ医薬創生科学講座

【背景】細胞周期が静止期にある静止期癌幹細胞が転移浸潤や薬剤耐性などの悪性形質とより深く関わっていると考えられている.我々はこれまで培養細胞を用いた研究から,低親和性神経成長因子受容体(p75NTR,CD271)が,食道扁平上皮癌幹細胞で発現しており,その大半が静止期にあるとともに,EMT関連分子や薬剤耐性関連分子を強発現することを報告してきた.【目的】食道扁平上皮癌組織における静止期癌幹細胞マーカーCD271発現の意義を検討し,末梢血液循環癌細胞検出による転移診断に応用する.【方法】当科にて根治切除を施行した食道扁平上皮癌37例の切除標本を用いてCD271および細胞分裂マーカーki67の発現を免疫二重染色を用いて検出し,臨床病理学的因子(年齢,性別,局在,組織型,TNM分類,臨床病期,術前化学療法)との関係を検討した.さらに本学倫理委員会の承認およびインフォームドコンセントに基づき,食道扁平上皮癌26症例(切除10例,化学放射線療法13例)より末梢血液3mlを採取し単核球層を分離し上皮マーカーEpCAMおよびCD271の発現をフローサイトメトリーを用いて検出した.【結果】切除標本において18/37例(48.6%)にCD271発現を認め,CD271発現はリンパ節転移と有意に相関した(p=0.013).CD271陽性例においてCD271陽性/ki67陰性細胞の割合(平均±SD)は19.6±18.4%であり,腫瘍の分化度(低分化型)と有意に相関した(p=0.007).末梢血液を用いた解析では健常人(n=10)および食道癌症例(n=23)におけるEpCAM陽性/CD271陽性細胞数(平均±SD)はそれぞれ0.4 ± 0.9 および16.0 ± 18.3であり(p = 0.013),食道癌診断における感度78.3%,特異度100%であった. EpCAM陽性細胞に占めるCD271陽性細胞の割合は56.7 ± 39.6 %であり,EpCAM陽性/CD271陽性 細胞数が切除標本における脈管侵襲(p=0.016)および非切除症例における遠隔転移(p=0.003)と有意に相関していた.一方,EpCAM陽性/CD271陰性 細胞数はどの臨床病理学的因子とも相関を認めなかった.【考察】食道扁平上皮癌組織においてCD271は低分化で細胞周期が静止期にある細胞で発現し,転移浸潤と関わっている可能性が考えられた.末梢血液循環癌細胞検出においてEpCAM とCD271を組み合わせることでより有効な転移診断を行える可能性が考えられた.本研究は文部科学省橋渡し研究加速ネットワークプログラムに採択され,特許出願を行い,臨床研究開始に向けたデータ集積を進めている.
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