演題

胃全摘後の摂食低下・体重減少とTJ-43六君子湯による改善及び新規メカニズムの発見

[演者] 田口 昌延:1
[著者] 出崎 克也:2, 小泉 大:1, 倉科 憲太郎:1, 細谷 好則:1, Alan Lefor:1, 堀江 久永:1, 北山 丈二:1, 佐田 尚宏:1, 矢田 俊彦:2
1:自治医科大学医学部 消化器外科学, 2:自治医科大学医学部 生理学講座統合生理学部門

胃切除後の体重減少は深刻な問題である.特に胃全摘術を受けると15~20%の体重減少を認め,quality of lifeは低下し,補助化学療法の継続性を低下させる.胃全摘後は複数の消化管ホルモンが変動し,食欲が低下するとされている.現在まで胃全摘後に上昇するコレシストキニン,セロトニン,術後に低下する食欲亢進ホルモンのグレリンをターゲットとした研究が行われてきた.しかし,臨床応用に繋がる成果は得られていない.近年,六君子湯が血中グレリンレベルを回復し,食欲不振を改善することが報告された.しかしグレリン産生臓器である胃を失った胃全摘後において,六君子湯が食欲改善,体重増加作用を示すかどうかは分かっていない.そこで本研究では,ラット胃全摘モデルを用いて,六君子湯の摂食と体重に対する効果と作用機序を明らかにすることにした.
ラット胃全摘後はSham群と比較して有意に摂食量と体重が減少した.胃全摘群において術後3日目から14日間六君子湯を投与すると,有意に摂食量と体重が増加し,投与終了後も効果が持続した.胃全摘後6日目,10日目は随時の血中Glucagon like peptide-1(GLP-1)濃度が高値を示した.一方,六君子湯を投与すると,この血中GLP-1上昇が有意に抑制された.術後10日目に食事負荷試験を行ったところ,胃全摘後は食後だけでなく,空腹時から血中GLP-1濃度が有意に高値を示し,六君子湯を投与すると,これら食前及び食後のGLP-1上昇が有意に低下した.血中グレリン濃度は術前と比較して,胃全摘後6日目と10日目は低下したが,いずれも六君子湯投与の有無で変化は認めなかった.胃全摘後の3日目からGLP-1受容体拮抗薬を投与すると有意に摂食量と体重が増加した.胃癌患者に対する胃全摘後において,術前と比較して術後1日目は空腹時の血中GLP-1濃度が有意に上昇した.
胃全摘後の早期は空腹時及び食後の血中GLP-1が上昇し,摂食量低下,体重減少の一因になっている.六君子湯を術後早期に投与することで,胃全摘後の摂食量低下と体重減少を改善する.この六君子湯の作用メカニズムの一つとして,胃全摘後に上昇する血中GLP-1濃度の低下作用を発見した.さらに,ヒト胃全摘患者においても術後に空腹時の血中GLP-1濃度が上昇することが分かった.本研究を基盤とし,今後は質の高い臨床試験が望まれる.
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