演題

逆流自然発癌モデルを用いた慢性炎症から発癌過程での微小環境の解明と半夏瀉心湯(TJ-14)による抑制

[演者] 宮下 知治:1
[著者] 松井 大輔:1, 山崎 祐樹:1, 牧野 勇:1, 尾山 勝信:1, 田島 秀浩:1, 高村 博之:1, 二宮 致:1, 伏田 幸夫:1, 太田 哲生:1
1:金沢大学附属病院 肝胆膵・移植外科

【目的】近年,発癌過程に慢性炎症が深く関与していることが認識され,微小環境に及ぼす影響が注目されている.macrophageは抗腫瘍免疫のM1型と発癌促進のM2型に分類され,M2型(腫瘍関連マクロファージ)の癌組織への浸潤度が予後に関与することなどが報告されている.このM2型の誘導にはProstaglandin(PG)E2の関与が示唆されている.我々は十二指腸液が食道へ逆流するラットモデルを開発し,発癌剤を使用せずに食道癌が認められること,発癌過程がヒトと同じInflammation-metaplasia-adenocarcinoma (IMA) sequenceによることを証明してきた.今回この自然発癌モデルを用いて,発癌過程での微小環境の変化を浸潤細胞を中心に検討し,またPGE2抑制作用を有する半夏寫心湯(TJ-14)を用いてその抑制効果を検討した.
【動物および方法】1.体重180g前後のラットを用いて十二指腸胃食道逆流モデルを作製し,術後50週目まで10週ごとに経時的に屠殺し,pStat3,CD68(汎マクロファージ),CD163(M2型)およびFoxp3(Treg)の免疫染色にて食道に浸潤する細胞を検討した.2.TJ-14投与群と非投与(cont)群を作成し40週目に屠殺し食道での変化を検討した.
【結果】1.pStat3およびCD68陽性細胞は炎症初期の術後20週目から認められ,扁平上皮過形成,Barrett上皮,癌組織の周囲の間質に発現が認められた.CD163陽性細胞は術後30週目以降でBarrett上皮および癌部周囲に発現が認められた.一方Foxp3陽性細胞は癌部周囲の一部に発現が認められるのみであった.2.TJ-14群の発癌率は10%(1/10)でcont群の67%(8/12)に比べて有意に低率であった.Barrett上皮の発生はTJ-14群50%(5/10)と,cont群の83%(10/12)に比べて低率である傾向を示した.またTJ-14群ではcont群に比べてCD163陽性細胞の浸潤を抑制していた.
【結語】慢性炎症の初期段階ではpStat3の活性やM1型の浸潤が認められ,癌の形成過程で腫瘍組織の微小環境がM2型へと誘導されることが示唆された.またTJ-14投与によりM2型の微小環境を改変できる可能性が示唆された.
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