演題

O2-92-14-3

メタゲノム解析を用いた急性胆嚢炎の起因菌同定,重症度評価,術中予測に関する検討

[演者] 鯨岡 学:1
[著者] 黒田 誠:2, 浅井 浩司:1, 渡邉 学:1, 松清 大:1, 斎藤 智明:1, 石井 智貴:1, 片田 夏也:1, 斉田 芳久:1, 草地 信也:1
1:東邦大学医療センター大橋病院 外科, 2:国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター

【目的】
近年,次世代型シーケンサーを用いたメタゲノム解析が原因不明疾患の病原体同定や食中毒病原体のトレーサビリティー等の解析において活用が注目されている.消化器疾患では炎症性腸疾患の腸内フローラ解析にもこの技術が用いられ,患者特有のフローラ変動(dysbiosys)の詳細な報告例が増加してきた.消化器外科領域で細菌感染症が強く関連する急性胆嚢炎では,網羅性を活用したメタゲノム解析による検査事例の報告はなく,その有用性は明らかとなっていない.Tokyo Guideline 2013 では起因菌同定のため胆汁培養が推奨されているが,培養検査のみでは,混合感染での有意菌の確定において精度が高くないのが現状である.今回われわれは,細菌の量的評価や迅速性,正確性で近年注目を浴びているメタゲノム解析を用いて急性胆嚢炎患者の胆汁における網羅的解析を行った.

【方法】
2015年5月から2016年8月において急性胆嚢炎に対して手術を施行した37例の解析を行った.術中に無菌的に採取した胆汁において院内培養検査,およびメタゲノム解析を行い,結果を比較・検討した.さらにメタゲノム解析において得られたDNA情報と,「胆嚢病理所見」,「胆嚢壁肥厚の程度」,「胆嚢頚部炎症の程度」,「胆嚢体底部の剥離難易度」,「胆嚢管の剥離難易度」の5項目において統計解析を行った.

【結果】
メタゲノム解析では,複数の起因菌を有する症例,Eshcerichia coli, Klebsiella spp., Clostridium perfringens の単独感染症例において胆嚢粘膜上皮由来のDNA解読数が多かった.発症から治療開始までの時間が短い症例では,胆嚢粘膜上皮由来のDNAが少ない傾向にあった.統計解析では,これらの解読数と,「病理所見」,「胆嚢壁肥厚の程度」,「胆嚢体底部の剥離難易度」の間に有意差を認めた.胆嚢粘膜上皮に由来するDNAの検出割合が多い症例ほど病理学的壊死所見を認め手術難易度も高度であった.

【結論】
メタゲノム解析を用いた胆汁における検出DNAの生物種と頻度の比較によって,胆嚢炎の検出細菌,重症度診断,術前難易度評価がより正確に行える可能性が示唆された.メタゲノム解析は,急性胆嚢炎における新たな診断基準の確立において一助になりうると考えられた.
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