演題

O2-91-14-5

幽門側胃切除後の膵体尾部切除術における残胃温存の検討~新規ICG蛍光法を用いた組織血流測定の試み

[演者] 後藤 邦仁:1
[著者] 江口 英利:1, 和田 浩志:1, 浅岡 忠史:1, 野田 剛広:1, 山田 大作:1, 岩上 佳史:1, 川本 弘一:1, 森 正樹:1, 土岐 祐一郎:1
1:大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科学

【はじめに】幽門側胃切除後に発生した膵体部癌に対して膵体尾部切除術を行った場合,残胃の血流は維持されるのかについて,いまだ詳細な検討は少ない.近年,indocyanine green(ICG)蛍光イメージングが臓器血流評価に有用であるとの報告が散見されるが,これまでのシステムでは組織血流の定量的な評価ができないため,明確なカットオフ値を設定できていないのが現状である.今回,我々は幽門側胃切除後の膵体尾部切除術症例の術後合併症を解析し,そのうち1例に新しいICG蛍光イメージングシステムを用いてリアルタイムに残胃血流の定量評価を行ったので報告する.
【対象/方法】2000年1月-2016年9月に当科で膵体部癌に対して膵体尾部切除をおこなった92症例のうち,幽門側胃切除術の既往のある9症例(10%)を対象とした.年齢の中央値は71歳(48-84歳),男性6例,女性3例であった.そのうち直近の1例について, ICGをリアルタイムに定量可能な蛍光イメージングシステムであるSPY(NOVADAQ社)を用いて,各ポイント(開腹時,脾動脈クランプ時,膵体尾部摘出後)においてICG(2.5mg)を静脈より注入し,残胃の血流を測定した.
【結果】(1)全症例において術関連死亡は認めなかった.(2) 残胃全摘を併施した1例を除いた8例の残胃に虚血性合併症を認めなかったが,2例(25%)に胃排泄遅延(Grade A 1例, Grade C 1例)を認めた.また1例(13%)に術後膵液漏(Grade B)を認めた.(3)SPYを用いた症例にて残胃の血流を測定したところ,開腹時(Ingress 112units/Egress 55units),脾動脈クランプ時(Ingress 42units/Egress 9units)であった. 脾動脈クランプ時は開腹時と比較して低下しているもののInflow/Outflowを認めたことから,予定どおり膵体尾部切除を施行.膵体尾部摘出後に再度血流を測定(Ingress 46units/Egress 14units)したところ, 脾動脈クランプ時とほぼ同等の結果であったため残胃を温存した.しかしこの症例は術後合併症として胃排泄遅延(Grade C)を認めた.
【結語】幽門側胃切除術後に膵体尾部切除をおこなった症例において残胃温存は安全に施行可能と考えられた.また新規ICG蛍光イメージングシステムを用いて残胃の血流を測定することで,従来の「存在診断」だけでなく「機能解析」に結びつく可能性が示唆された.
詳細検索