演題

O2-90-14-6

腹腔鏡下胃切除術での膵液漏発生メカニズムの検証

[演者] 井田 智:1
[著者] 比企 直樹:1, 石沢 武彰:1, 津田 康雄:1, 熊谷 厚志:1, 布部 創也:1, 大橋 学:1, 佐野 武:1, 山口 俊晴:1
1:がん研究会有明病院 消化器外科

【背景】胃切除後の術後膵液漏(postoperative pancreatic fistula:POPF)は,腹腔内感染症や仮性動脈瘤を合併するなど重篤な合併症の一つである.膵液漏の原因として膵組織に切り込むなどの膵実質の損傷,熱損傷や圧損傷が考えられる.膵実質の損傷は,腹腔鏡の拡大視効果によりほぼ予防でき,また我々はブタを用いた実験にてエネルギーデバイスのアクチベーション回数を最小限にすることで,熱損傷は予防できることを報告してきた.一方で,膵上縁郭清時には膵を背側・下方に圧排し,膵上縁の視野を確保することが多いが,この際の圧損傷に着目した研究はない.そこで,腹腔鏡下胃切除(LAG)時の膵圧排により膵液漏が生じるかどうかを検証した.
【方法】4か月齢,体重60Kg,雌性ブタ3頭を使用した.LAGに準じて臍部にopen法にてカメラ用ポートを,左右上腹部に術者・助手用ポートを計4本挿入した.網嚢を開放し,膵臓を視認できるようにした.ガーゼを鉗子で把持し,膵を背側・下方に15分間圧迫した.①膵圧迫前,②圧迫直後,③1時間後,④2時間後,⑤4時間後に,1)腹腔内の観察および腹水を採取しアミラーゼ値を測定した.同時期に動脈血採血を行い,白血球数を測定した.2)膵液漏を可視化するために,キモトリプシンに特異的な蛍光プローブを膵圧迫部に散布し,専用の蛍光イメージング装置で経時的に観察した.3)4時間後に膵切除を行い,膵組織をホルマリン固定し圧迫部位の組織像を評価した.
【結果】1)経時的に膵圧迫部は浮腫状となり,暗赤色の腹水がみられた.腹水中のアミラーゼの中央値(U/L)は,①46,②502,③2268,④1916,⑤12509と経時的に上昇した.また白血球数も経時的に上昇していた.2)膵圧迫部および周囲の貯留した腹水には,圧迫直後から蛍光が確認され,膵液漏の存在が示唆された.この現象は経時的に顕著になった.3)組織学的には,膵表面の被膜は保たれているものの,表面から深部にかけて膵腺房細胞が壊死し炎症細胞の浸潤が見られた.
【まとめ】LAGの際の膵圧排が膵液漏の一因となる可能性が示された.本研究結果は,LAGでの膵上縁リンパ節郭清の手術手技改善の一助になると考える.
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