演題

O2-90-14-5

術前CT矢状断で評価する膵臓の解剖学的位置と腹腔鏡下胃切除術後合併症

[演者] 熊谷 厚志:1
[著者] 比企 直樹:1, 布部 創也:1, 辻浦 誠浩:1, 神谷 諭:1, 井田 智:1, 大橋 学:1, 佐野 武:1, 山口 俊晴:1
1:がん研究会有明病院 消化器外科

背景:腹腔鏡下胃切除術では,膵上縁リンパ節郭清に際し助手が膵臓を牽引するなどして術野を展開する必要があるが,この操作が膵臓関連合併症を惹起する可能性が指摘されてきた.近年はより愛護的に膵臓を扱う工夫がされているが,それでも患者の体型によっては膵臓を牽引しないと良好な術野が得られないことがある.
方法:2013年1月から2015年12月に当院でcStage I胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した症例につき,術前CTの矢状断で膵表面から大動脈へ引いた垂線の最長距離(Pancreas-aorta[P-A]距離),膵上縁から大動脈へ引いた垂線の距離(Upper border of the pancreas-aorta[UP-A]距離),膵上縁から大動脈へ引いた垂線が大動脈と交わる点から腹腔動脈根部までの距離(Upper border of the pancreas-celiac artery[UP-CA]距離),膵上縁と腹腔動脈根部を結ぶ線が大動脈となす角(UP-CA角)を測定し,これらと術後合併症との関連をロジスティック回帰分析で求めた.
結果:対象期間に腹腔鏡下幽門側胃切除が行われたcStage I胃癌患者のうち,術前CT矢状断での解析が可能であったのは394例であった.各測定値の中央値(範囲)はP-A距離38.9 (12.9-69.8) mm,UP-A距離29.3 (8.3-57.0) mm,UP-CA距離10.5 (-46.8-61.3) mm,UP-CA角73.3 (6.6-149.4) 度であった.Clavien-Dindo grade III以上の術後合併症を23例で認め,うち膵液漏は6例であった.多変量解析でUP-A距離(オッズ比 2.70, 95%信頼区間1.13-6.46, P=0.03),UP-CA角(オッズ比 2.67, 95%信頼区間1.12-6.37, P=0.03)はいずれもgrade III以上の術後合併症と有意に関連していた.膵臓から見て腹腔動脈根部が深い症例および膵臓が腹腔動脈根部と比して頭側に位置する症例では,膵上縁のリンパ節郭清を含めた手術操作が難しく,これが重篤な術後合併症につながるものと考えられた.
結論:術前CT矢状断におけるUP-A距離,UP-CA角は,腹腔鏡下幽門側胃切除術後合併症の予測因子となり得る.
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