演題
SS05-6
血清自己抗体による大腸癌診断の新しい展開~p53抗体検査を中心として~ |

【対象患者と方法】対象は,千葉県がんセンターならびに東邦大学において治療を受けた原発性大腸腺癌患者合計775例である.治療開始前の患者血清をマイナス80度に保管してELISA法にて自己抗体を解析した.解析対象分子は,p53, HSP70,NY-ESO-1, galectin-1, RalAである.東邦大学症例では,同時にCEA,CA19-9を測定して比較検討した.また,p53抗体については化学療法前後ならびに手術前後のモニタリングを行い,抗体価の変化と再発リスクとの関連性について検討した.
【結果と考察】千葉県がんセンター症例での各種自己抗体陽性率は,p53=19.7%,RalA=13.5%, HSP70=12.1%, galectin-1=10.7%, NY-ESO-1=8.0%であった.疑陽性率0%となる基準値を用いて複数の自己抗体を併用することで陽性率30%前後となる.一方,東邦大学症例での陽性率はCEA=44.0%,CA19-9=13.4%,p53抗体=29.4%であった.合計でのp53抗体陽性は26%であり,p53抗体単独陽性率は14.4%であった.CEA+CA19-9とp53抗体を併用することでstage Iでの陽性率は39%,stage IVの陽性率は85%まで上昇する.p53抗体価は,治療経過とともに変動し,一般的には治療効果の高い症例では抗体価が低下して,抗体価の低下しない症例で再発リスクが高い傾向がある.しかし,抗体価が陰性化する症例は半数未満であり,再発予測は抗体価と従来型腫瘍マーカーの詳細な解析が必要である.
【結語と展望】p53抗体を中心とする自己抗体測定は簡便検査方法であり,測定原理が単純なことから経費が低い検査である.早期症例の簡便な診断や治療効果判定の予測,手術後のモニタリングとして,既存の腫瘍マーカーとの併用により,大腸癌診療において質の高い診断・治療を提供できると考えられる.