演題

O3-130-10-4

成人女性の鼠径ヘルニアとその類似疾患に対する手術~Nuck管水腫と鼠径部子宮内膜症を含む~

[演者] 大越 香江:1
[著者] 水本 雅己:1, 木下 浩一:1
1:総合病院日本バプテスト病院 外科

【はじめに】成人女性の鼠径部腫瘤の原因として,鼠径ヘルニア,Nuck管水腫,鼠径部子宮内膜症などを考慮する必要がある.Nuck管水腫の発生機序は鼠径ヘルニアと同様であり,腹膜鞘状突起が開存したまま液体貯留をきたしたもので,男性の精索水腫に相当する.本邦における子宮内膜症は約12万人と推定されるが,鼠径部に発症するものは0.8%,中でも鼠径管内の内膜症はさらにまれである.鼠径ヘルニアやNuck管水腫に子宮内膜症が合併することがあり,これらの疾患に対する当院における手術経験をもとに,診断・治療方針について考察する.
【症例】2012年1月から2016年10月までの当院における鼠径ヘルニア手術(Nuck管水腫と鼠径部子宮内膜症含む)は273例中,21-50歳の女性は8例(2.9%)であり,これら8例をretrospectiveに検証した.
【結果】8例の内訳は,鼠径ヘルニア6例,Nuck管水腫2例であり,それぞれ2例および1例に子宮内膜症の合併を認めた(今回の検証により,手術当時は単純な鼠径ヘルニアと考えられていた症例に子宮内膜症が合併していたことが判明した).子宮内膜症合併症例には3例中2例に腹腔内子宮内膜症の既往があった.術前に5例でCT or/and USを施行し,4例で嚢胞性病変が指摘され,Nuck管水腫と鼠径部子宮内膜症を反映していた.鼠径ヘルニア及び鼠径管後壁の脆弱を伴うNuck管水腫に対して,ダイレクト・クーゲル法などによる鼠径ヘルニア根治術を施行した.Nuck管水腫のみであれば水腫摘出のみを施行している.全症例特に問題なく術後1-2日に退院した.
【考察】身体所見のみでこれらの疾患を鑑別することは困難である.子宮内膜症が合併する可能性があることを念頭に置き,月経に関連するサイズの増減や疼痛の有無,子宮内膜症の既往を問診で確認することが重要である.さらに,US・CT・MRによる所見も鑑別の一助になる.ヘルニアがあればヘルニア根治術を行う.Nuck管水腫の場合,内鼠径輪の開大や鼠径管後壁の脆弱を認めなければ,前方アプローチによる水腫摘出のみでよいと言われている.子宮内膜症を合併していれば再発を避けるため十分な切除が必要である.
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