演題

胃癌腹膜播種治療における腹腔内液中バイオマーカーの意義

[演者] 北山 丈二:1
[著者] 山口 博紀:1, 石神 浩則:3, 大澤 英之:1, 細谷 好則:1, 山下 裕玄:2, 瀬戸 泰之:2, 佐田 尚宏:1
1:自治医科大学医学部 消化器外科学, 2:東京大学大学院 消化管外科学, 3:東京大学 外来化学療法部

【目的】胃癌腹膜播種に対するタキサン腹腔内反復投与(IP)の有用性を報告してきたが,本治療法のもう一つの利点は皮下留置型腹腔ポートから非侵襲的に腹腔内液(腹水・腹腔洗浄液)を反復採取できることである.今回,対象となる胃癌患者から採取した腹腔内液を対象として分子細胞生物学的解析を施行,その臨床経過と照合し治療上のバイオマーカーとしての意義を検討した.
【対象と方法】2005年から2014年のP1またはCY1胃癌症でIP治療を施行した患者から各コース毎に腹腔ポートから腹腔内液を採取した.また,胃癌手術症例では開腹時の腹腔洗浄液を採取した.これらのサンプルを材料として以下の方法で解析した.(1)CEAmRNA定量: TRC(Transcription Reverse transcription Concerted reaction)法を用いてCEAmRNA量を測定,内部標準のPBGDmRNA量で補正した値を(CEAmRNA relative index;CmRI)として算出した.(2)遊離癌細胞の定量:Ficoll遠心法にて細胞分画を分離,EpCAM(CD326),CD45抗体で二重染色し,flowcytometryを用いて7AAD(+)死細胞を除去した細胞集団の中で,CD326(+)癌細胞/CD45(+)白血球細胞比をTumor /leukocyte Ratio(TLR)として算出した.(3)超遠心法でエクソソーム分画を採取,含有されるmicroRNAの網羅的解析を施行した.
【結果】CmRI,TLR値はともに従来の細胞診(CY)と比べ, 腹膜播種の程度,治療の奏効とより良好な相関関係を示した.特に,IP治療を受けた64例の生存期間中央値(MST)は,治療前のTLR値に依存性が高かった(TLR<1%;29か月, 1%<TLR<10%; 13か月, 10%<TLR; 9か月).一方,T4,P0CY0胃癌で根治的胃切除を受けた23例において,開腹時のTLR=0を示した 13例では播種再発は認めなかったが,TLR>0を示した10例中4例で腹膜再発,2例でリンパ節再発を認めた.一方,播種陽性症例でIPが奏効後胃切除を受けた39例では全例でCmRIの低下を認めたが,手術直前のCmRIが100以下に低下した19例のMSTが42か月と極めて良好であったのに対し,術前CmRI>100であった20例では21か月に留まっていた.また,腹腔内のExosomal miRの発現パターンは肉眼的播種の有無,IP治療前後で大きく変動しており,個々のmiRの発現量について現在解析中である.
【結語】腹腔内液は,播種病変や腹腔内環境を鋭敏に反映する多くの因子を含んでおり,腹膜播種治療に有用な新規バイオマーカーを探索する上での貴重な臨床サンプルであると思われる.
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