演題

膵癌に対する免疫療法

[演者] 青木 琢:1, 垣見 和宏:2, 松下 博和:2, 星川 真有美:3, 長谷川 潔:3, 國土 典宏:3, 窪田 敬一:1
1:獨協医科大学医学部 第二外科学, 2:東京大学附属病院免疫細胞治療学教室(メディネット), 3:東京大学大学院 肝胆膵外科学

【目的】膵癌切除後の治療成績はいまだ不良であり,また近年注目されている免疫チェックポイント阻害剤も膵癌に対しては有望なデータが得られていないのが現状である.我々はGemcitabine(GEM)を用いた標準的な膵癌術後補助化学療法に,自己活性化γδTリンパ球を用いた免疫療法を付加する自主臨床研究を2008年から2012年にかけ実施した.その結果を報告するとともに,膵癌における免疫療法の問題点を考察する.
【方法】(1)膵癌術後補助化学免疫療法:2008年から2012年までの通常型膵癌およびIPMN由来浸潤癌の切除例を対象とした.GEMは800mg/m2 3投1休を12クール施行した.また,術後末梢血から単核球成分を採取しゾレドロネートを用いて刺激培養し,培養細胞中γδTリンパ球が60%以上となった症例を免疫治療の適格症例とし,6ヶ月間12回の治療を付加した(株式会社メディネットとの共同研究).治療中,単核球成分中のγδTリンパ球の比率を測定した.主評価項目は無再発生存期間とした. (2)膵癌症例の免疫モニタリング: 切除可能膵癌症例20例を対象に,術前,術後の末梢血サイトカイン,ケモカインを測定し,再発予後との相関を検討した.
【結果】(1)研究期間中同意の得られた56例のうち,免疫療法の適格症例は30例であり,実際投与を受けた症例は28例であった.非適格症例の多数が細胞培養期間中γδTリンパ球の十分な増殖が得られなかった症例であった.施行例に中止例はなく,免疫療法に関連した有害事象は認めなかった.同時期に手術を受け,GEM単独の補助療法を受けた群との比較では,無再発生存率,全生存率とも有意差は認められなかったが,一方,免疫療法開始前の培養細胞中のγδTリンパ球の比率が高かった症例は治療中のγδTリンパ球の蓄積も良好であり,特に培養細胞中γδTリンパ球が80%以上の症例(n=9)は有意に予後が良好であった.
(2)手術前後でサイトカイン,ケモカインの数値に有意差は認めなかった.末梢血中の単核球割合高値が予後不良,NK細胞割合高値が予後良好因子であった.
【結論】術後末梢血中にγδTリンパ球が保たれていることは,それ自体が予後のバイオマーカーとなっているか,あるいは補助療法に対する効果判定指標となっていることが示唆される.膵癌症例では術前から免疫のエフェクター細胞が減少している可能性があり,エフェクター細胞の輸注治療と免疫チェックポイント阻害剤の併用が今後有望なのではないかと考える.
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