演題

消化器癌における免疫チェックポイント機構の分子機序解明

[演者] 岡野 慎士:1,3, 吉住 朋晴:1, 池田 哲夫:1, 沖 英次:1, 佐伯 浩司:1, 今井 大祐:1, 堤 智祟:1, 是久 翔太郎:1, 小田 義直:2, 前原 喜彦:1
1:九州大学大学院 消化器・総合外科学, 2:九州大学大学院 形態機能病理学, 3:クリーブランドクリニック・消化器病・外科研究施設

免疫チェックポイント阻害薬の登場は,癌患者の免疫応答が既形成の腫瘍塊を劇的に縮小し得ることを証明し,がん免疫療法の歴史的変革をもたらした.特にPD-1/PD-L1に対する阻害薬は,非小細胞肺癌,腎細胞癌,悪性黒色腫において,標準療法の一つとして認知されている.開発が遅れていた消化器癌においても,既に胃癌の第III相臨床試験でその効果が証明され,今後益々,広汎な癌腫に応用されていくものと考えられる.したがって,Precision medicineの観点から,免疫チェックポイント阻害剤のバイオマーカー探索や腫瘍内微小環境などの腫瘍特性の同定は重要な課題の一つである.最近の知見では,遺伝子変異によりネオアンチゲンが増加し,新規の腫瘍抗原特異的T細胞応答が検出されるミスマッチ修復異常を持つ癌腫において,免疫チェックポイント阻害薬がよく奏功することが明らかとなってきている.
これまで我々は以下の事について明らかにしてきた.①食道扁平上皮癌,肝細胞癌,膵腺癌において,HLA-class I の発現の層別化はPD-L1の発現の高低による患者の予後予測に有用であった.②腫瘍のPD-L1発現を伴う腫瘍内微小環境には大きく2つのパターンが存在した:i)CD8及びCD4 T細胞が浸潤する免疫刺激性腫瘍内微小環境,ii)CD68の浸潤や制御性T細胞浸潤を伴い比較的CD8 T細胞浸潤の少ない免疫抑制性腫瘍内微小環境.③食道扁平上皮癌や膵腺癌において分子病理学的にEpithelial-mesenchymal transition (EMT)を認める部位には高いPD-L1発現を認めた.食道扁平上皮癌細胞株ではTGF-βによるEMT誘導時にIFN-γ刺激を加えると相乗的にPD-L1の発現亢進を来すことが判明した.膵腺癌細胞株ではIFN-γ単独刺激によるSTAT1を介したPD-L1の発現亢進と遅発性のSTAT3活性化によるEMT誘導が認められた.④MSI-H大腸癌症例における病理像の三次元構築解析により,腫瘍浸潤先進部にPD-L1発現のピークを認め,同部位にはCD163陽性のマクロファージの集族並びに血管新生を認め,腫瘍細胞,腫瘍内マクロファージ,幼弱なCD31陽性血管内皮細胞にPD-L1発現を認めた.
本発表では,以上の結果を文献的考察も加えて報告すると伴に,消化器癌における集学的治療の一つとしての免疫チェックポイント阻害薬の可能性と問題点及び今後の展望について考察していきたい.
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