演題

O3-160-15-5

当科における大腸癌肝転移に対する手術先行治療の現状と今後の課題

[演者] 北東 大督:1
[著者] 野見 武男:1, 安田 里司:1, 川口 千尋:1, 吉川 高宏:1, 石岡 興平:1, 山田 高嗣:1, 赤堀 宇広:1, 木下 正一:1, 庄 雅之:1
1:奈良県立医科大学医学部 消化器外科・小児外科・乳腺外科学

【緒言】 当科は大腸癌肝転移に対し手術先行を基本としてきた.手術先行は化学療法による肝障害や切除機会の喪失がない利点を有するが,肝切除後早期に再発をきたす予後不良症例も時に経験する.手術先行の予後不良因子を同定するとともに,同因子を有する症例で手術先行と化学療法先行のプロペンシティ解析を行い予後の比較を行った.【方法】 再肝切除や年代による化学療法の相違の影響を除くため,無再発生存率,全生存率は指標とせず,2年以内の外科的切除が不能な再発を「切除不能再発」と定義し,同再発に関わる因子をχ2検定,及びロジスティック回帰分析にて検討した.【対象】 1990~2016年8月の当科の大腸癌肝転移治癒切除症例236例(手術先行200例,化学療法先行36例).
【検討1】 肝切除後2年以上,または死亡まで追跡した手術先行の167例中,切除不能再発をきたしたのは71例(42.5%)であった.切除不能再発症例の3,5年生存率は32.3%,3.8%と非切除不能再発症例の83.8%,66.8%と比較して極めて不良であった(p<0.001).切除不能再発に関わる因子は,単変量解析で原発巣N2以上 (p=0.001),直腸原発 (p=0.029),原発巣T4 (p=0.046),術前CEA60ng/ml以上 (p=0.045),同時性M因子(p=0.047),出血量1000ml以上 (p=0.027),R1切除 (p=0.021)であり,多変量解析では原発巣N2以上 (p=0.010, HR: 2.50),R1切除 (p=0.014, HR: 2.53)であった.
【検討2】 原発巣N2以上(リンパ節転移4個以上,または主・側方リンパ節に転移陽性)の症例は,手術先行中64例(32.0%),化学療法先行中13例(36.1%)に認めた.背景因子で化学療法先行は腫瘍個数4個以上(P=0.002),同時性遠隔転移合併(P=0.023)の割合が有意に高かった.肝転移個数,肝転移最大径,術前CEA値,同時性M因子にてプロペンシティ解析を行い,各群から抽出した12例を比較すると,背景因子は統一された一方,肝切除後の3/5年生存率は化学療法先行:38.1/23.6%,手術先行:33.3/11.1%で有意差はなかった (p=0.454).しかし化学療法先行の生存期間を化学療法開始日から算定すると3/5年生存率は66.7/30.0%で化学療法先行の予後が有意に良好であった(p=0.046).
【結語】原発巣N2/3の大腸癌肝転移では化学療法の先行が予後の延長に寄与する可能性が示唆された.
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