演題

膵・胆道悪性腫瘍に対するがん免疫療法の治療効果を予測するバイオマーカーの探索

[演者] 土川 貴裕:1, 上野 峰:1, 中村 透:1, 桑原 尚太:1, 中西 善嗣:1, 浅野 賢道:1, 野路 武寛:1, 岡村 圭佑:1, 七戸 俊明:1, 平野 聡:1
1:北海道大学大学院 消化器外科学分野Ⅱ

難治性再発性の膵・胆道悪性腫瘍は予後不良であり,根治切除術を中心とした集学的治療戦略の確立が急務である.癌局所環境(微小環境)は癌細胞以外に様々な宿主由来細胞から構成されるが,腫瘍と宿主免疫反応を基軸として局所環境をみた場合,標準治療である手術,抗癌剤,放射線療法は,腫瘍排除相(elimination phase),平衡相(equilibrium phase),逃避相(escape phase)から成る局所免疫バランス(Schreiber RD, Science 2011)に影響を与える.従って,標準治療不応性の再発性腫瘍に免疫療法を適用する際には,原発巣の臨床病理情報だけではなく,標準治療施行後の免疫バランスを反映するバイオマーカーに基づき,治療効果が良好と予想される患者を選択する必要がある.
当科では,これまでに膵・胆道癌症例の根治切除検体を免疫組織学的に解析し,術前補助療法が局所環境に及ぼす影響,すなわち局所浸潤リンパ球(Ann Surg Oncol. 2012),免疫抑制細胞 (Cancer Sci. 2013),間葉系細胞 (PLoS One. 2016),炎症性サイトカイン の分泌(Cancer Res. 2015)に影響を与え,これらのバランス変化が患者予後を予測するバイオマーカーになり得ることを報告してきた.さらに,免疫チェックポイント阻害薬のターゲット分子である腫瘍細胞表面のPD-L1発現が,EMT (Epithelial-Mesenchymal-Transformation)関連蛋白の発現変化と局所リンパ球浸潤を伴い,胆道癌における独立予後規定因子となることも判明している.
以上をまとめると,難治性再発性の膵・胆道悪性腫瘍にがん免疫療法を適用する際には,抗癌剤治療の既往歴や上述したEMT関連蛋白の変化,局所免疫バランスを考慮した上で候補症例の選択をするべきである.上述したバイオマーカーは根治切除検体の病理組織学的解析で得られる情報であるが,今後,生検検体やliquid biopsy検体など,腫瘍切除不可能な場合でも局所免疫環境のモニタリングが可能なサロゲートマーカーを探索し,臨床応用を目指す方針である.
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