演題
SS04-4
膵・胆道悪性腫瘍に対するがん免疫療法の治療効果を予測するバイオマーカーの探索 |

当科では,これまでに膵・胆道癌症例の根治切除検体を免疫組織学的に解析し,術前補助療法が局所環境に及ぼす影響,すなわち局所浸潤リンパ球(Ann Surg Oncol. 2012),免疫抑制細胞 (Cancer Sci. 2013),間葉系細胞 (PLoS One. 2016),炎症性サイトカイン の分泌(Cancer Res. 2015)に影響を与え,これらのバランス変化が患者予後を予測するバイオマーカーになり得ることを報告してきた.さらに,免疫チェックポイント阻害薬のターゲット分子である腫瘍細胞表面のPD-L1発現が,EMT (Epithelial-Mesenchymal-Transformation)関連蛋白の発現変化と局所リンパ球浸潤を伴い,胆道癌における独立予後規定因子となることも判明している.
以上をまとめると,難治性再発性の膵・胆道悪性腫瘍にがん免疫療法を適用する際には,抗癌剤治療の既往歴や上述したEMT関連蛋白の変化,局所免疫バランスを考慮した上で候補症例の選択をするべきである.上述したバイオマーカーは根治切除検体の病理組織学的解析で得られる情報であるが,今後,生検検体やliquid biopsy検体など,腫瘍切除不可能な場合でも局所免疫環境のモニタリングが可能なサロゲートマーカーを探索し,臨床応用を目指す方針である.