演題

O1-40-15-2

高分子ミセル化ICGによる光温熱効果に基づいた消化器癌腹膜播種治療の開発

[演者] 野村 信介:1
[著者] 辻本 広紀:1, 守本 祐司:2, 小関 英一:3, 原 功:3, 菅澤 英一:1, 平木 修一:1, 長谷 和生:1, 山本 順司:1, 上野 秀樹:1
1:防衛医科大学校医学部 外科学, 2:防衛医科大学校医学部 分子生体制御学, 3:島津製作所 基盤技術研究所

【諸言】近年の医療技術の進歩にもかかわらず,胃癌をはじめとする消化器癌の腹膜播種は依然として制御困難な病態であり,新たな治療法の開発が急務である.近年ナノ医学の進歩で薬剤輸送システム(DDS)の開発が進み,粒子径を調節することで, ナノ粒子を効率的に悪性腫瘍組織中に取り込ませ,滞留させることができるようになった (EPR効果).我々はこれまでに高分子ミセル化ICG (ICGm)を開発し,マウス腹膜播種モデルにおいてEPR効果を利用した腹膜播種診断と光線力学療法の優れた治療効果を報告してきた(Tsujimoto, Cancer Sci 105: 1626, 2014).この抗腫瘍効果の機序として,光増感作用による一重項化酸素の殺細胞作用のほかに,近赤外光照射により産生されたICGの熱エネルギー効果(光温熱効果)が考えられる.そこで今回我々は,ICGが有する光温熱効果に着目し,皮下腫瘍移植マウスを用いて,良好な抗腫瘍効果を発揮する条件について実験的に検討した.【対象と方法】6週齢,雌性のBALB/cマウスの背部に大腸癌細胞株(Colon26)を移植し担癌マウスを作成した.照射48時間前にICGmを経静脈的に投与し,波長808nmの近赤外光を照射した.照射は段階的に複数の強度,時間を設定し,照射中の腫瘍表面温度を赤外線温度計測器で測定し,腫瘍表面温度と照射から21日目の腫瘍体積との関連について検討した.【結果】近赤外光照射により腫瘍表面温度は急激に上昇し,120秒以内にピークとなり,以後漸減した.照射時間を一定にし(1000秒),種々の照射強度を設定(250-1000mW/cm2)した検討では,腫瘍表面の最高温度(35-50度)と近赤外光の強度との間に正の相関が見られ,750 mW/cm2以上の出力でほぼ全例腫瘍は消失した.次に照射強度を750 mW/cm2に固定し,種々の照射時間を設定(111-1000秒)し,腫瘍の縮小を検討すると,666秒以上では腫瘍は残存したものがみられ,333秒以下では全例で腫瘍が消失し,腫瘍縮小効果は照射時間に依存しなかった.そこで腫瘍の消失と腫瘍表面温度との関連を検討したところ,腫瘍表面温度が43度を超えているものでは全例で腫瘍が消失し,43度に達しなかったものでは腫瘍が残存した.【考察】ICGmの経静脈投与と光照射による光温熱作用で優れた抗腫瘍効果が得られることを確認した.この抗腫瘍効果は表面温度が43℃以上に達した際に発揮されることから, 適切な抗腫瘍効果を得る上で,リアルタイムなThermal dosimetryと近赤外光の照射強度の制御が重要と考えられた.
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