演題

がん免疫療法における患者がん組織を用いたxenograftモデルの有用性の検討

[演者] 和田 聡:1
1:神奈川県立がんセンター

近年がん患者から摘出したがん組織を免疫不全マウスに移植するPatient-Derived Xenograft (PDX)が盛んに行われるようになった.患者個々の病態を再現出来る事から,個別化医療(Personalized Medicine)や最適医療(Precision Medicine)を実現するための重要な研究手法となってきており世界中で開発が進められている.またがん領域創薬研究におけるin vivoモデル薬効評価の多くは,in vitro試験で効果を認めた細胞株を免疫不全マウスに移植したCell line-derived xenograft(CDX)モデルを使用しており,Drug deliveryや治療抵抗性に関わるヒトがん組織構造体の不均一性を反映しないため不十分と考えられてきた.しかし,臨床腫瘍組織を分画化せず直接免疫不全マウスへ移植・株化するPDXモデルの作製により,臨床により近似した前臨床創薬研究におけるProof of concept/ mechanism評価系の構築,Biomarker探索等がんの分子基盤解明研究に用いられるようになった.これらの実現はヌードマウス・NOD-scidマウスから発展した超免疫不全マウスであるNOG (NOD/Shi-scid, IL-2Rγnull) マウスやNSG(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ)マウスが樹立されたことが大きく,またヒト造血幹細胞移植後にNOD-scidマウスでは見られなかったヒトT細胞の分化が末梢リンパ組織で認められることから,ヒト免疫系モデルマウスとしての需要も高まってきている.こうしたPDXモデルの発展を受けて,昨年米国立がん研究所(NCI;メリーランド州ベセスダ)は,大半の薬剤スクリーニングにおいて使用してきたヒトがん細胞株パネル「NCI-60」の使用をやめPDXモデルに切り替えることを決定した.NCI-60は,NCIが開発した培養ヒトがん細胞株60種からなる抗がん剤スクリーニング用パネルで,1990年以降の製薬業界および研究界は,NCI-60を使って10万種類以上の化合物をスクリーニングしてきた.このような世界的な潮流を受けて,我々の施設でもH22年より"臨床がん材料のin vivo新規評価系の開発と研究への利用"目的に多数のPDXモデルを作製してきた.今回このPDXモデルを用いたがん免疫療法への有用性について検討したので報告する.
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