演題

がん免疫療法における"チェックポイント"の克服

[演者] 吉村 清:1
1:国立がん研究センター中央病院

腫瘍の免疫機構は,細菌やウィルス等の感染による異物排除の概念から発展した免疫機構と異なる点が有る.これを克服するために負の免疫機構に注目し,その結果生まれた概念が"免疫チェックポイント"である.
元々がん免疫療法の開発は,免疫システムの活性化の歴史である.つまりがん特異的抗原を認識させる,あるいは樹状細胞を活性化させて適切な抗原を提示して共刺激によりT細胞を活性化させる,さらに免疫状態を活性化させるためにサイトカインを腫瘍近傍で産生させる,といった観点で進められた.
これらの概念は変わることなく今でも重要な機構であるが,これに加え腫瘍微小環境において免疫の"編集"が起こることから,免疫機構における抑制系の解除といった概念が重要であることがわかった.ここで生まれた一つの成果が"免疫チェックポイント阻害剤"である.抗PD-1あるいはPD-L1抗体を用いた免疫療法は今後がんの治療そのものを変える可能性を有する.
この一方で,現在これらの治療をきっかけにこれまで行われてきた,がん治療が効きやすい人と効きにくい人を遺伝子学的に検索しあらかじめ予測できないかといった概念から,プレシジョン・メディスンの時代が始まりつつある.従来の免疫モニタリングによるバイオマーカー探索に関しても進歩が見られ,今後,がん免疫療法はどのような形で進む可能性があるかを含め,がん免疫療法の歴史を紐解きながら固形がんへのT細胞浸潤機構や適切な活性化の解明を通した我々の取り組みを紹介し,今後のがん免疫療法の開発の可能性を含め論じる.
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