演題

O2-77-12-1

生体肝移植における血行再建手術の伝承と応用 ~凍結保存静脈graftによる肝静脈形成・顕微鏡下肝動脈吻合~

[演者] 冨樫 順一:1,2
[著者] 赤松 延久:1,2, 伊藤 橋司:1, 山本 雅樹:1, 田村 純人:1,3, 金子 順一:1, 有田 淳一:1, 阪本 良弘:1, 長谷川 潔:1, 國土 典宏:1,2
1:東京大学大学院 人工臓器・移植外科学, 2:東京大学附属病院 臓器移植医療部, 3:東京大学附属病院 組織バンク部

背景:
生体肝移植における凍結静脈片を用いた静脈再建手技や顕微鏡下での肝動脈吻合手技は,肝悪性腫瘍に対する肝切除における肝静脈再建や肝門部領域胆管癌での肝動脈合併切除再建を要する拡大肝葉切除といった肝胆膵高度進行癌症例でのR0を達成するための手技として応用されている.これまでの教室の生体肝移植での肝静脈・肝動脈血行再建術の成績を評価検討すると共に,生体肝移植術,肝胆膵悪性疾患に対する拡大切除術における,これらのテクニックを供覧する.
方法:
当科で施行された成人生体肝移植481例(右肝グラフト269例,左肝185例,後区域27例)における肝静脈・肝動脈再建の成績を検討した.教室では流出路狭窄を来さない吻合口確保ために凍結静脈片を全例で使用している.また生体肝移植黎明期より肝動脈再建には顕微鏡下吻合を原則としてきた.
結果:
1) 静脈再建: IVRを含む侵襲的処置を要する流出路狭窄の発生率は右肝グラフト,左肝グラフト,後区域グラフトで2.6%, 1.6%, 3.7%であった.再建肝静脈別の1,3,5年開存率はRHV 97%, 97%, 97%,L+MHV 98%, 98%, 98%,V5 43%, 36%, 35%,V8 61%, 59%, 58%, IRHV 84%, 83%, 82%であった.これらの肝静脈再建の技術は39例(41本)の肝切除における肝静脈再建に応用され,凍結静脈片使用30例,自家静脈片使用11例であり,その1, 3, 5年開存率は60%, 46%, 46%と,生体肝移植におけるV5,V8再建と同等であった.
2) 肝動脈再建:481例中475例(99%)において顕微鏡下吻合が行われ,27%の症例で複数本の動脈再建を要した.移植後肝動脈血栓・狭窄は15例(3%)であり,移植後発生日数中央値は12病日であった.肝動脈血栓症症例の死亡率は53%と高く,再移植例は1例(7%)のみに行われた.顕微鏡下肝動脈再建はこれまで10例の肝門部領域胆管癌に対する拡大肝切除+肝動脈合併切除再建に応用され,術後肝動脈閉塞を認めていない.
今回は生体肝移植術,肝胆膵外科手術におけるこれらの血行再建手技をビデオで提示する.
結論:
生体肝移植術の発展とともに培われた肝静脈再建,顕微鏡下肝動脈吻合の技術は,生体肝移植そのものの成績の向上につながるだけでなく,肝胆膵高度進行癌に対する拡大R0切除にも大きく貢献している.
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