演題

O2-74-11-4

菱形残胃作成と食道裂孔挿入を付加した噴門側胃切除・食道残胃吻合法

[演者] 安田 篤:1
[著者] 新海 政幸:1, 加藤 寛章:1, 平木 洋子:1, 岩間 密:1, 白石 治:1, 今野 元博:1, 木村 豊:1, 今本 治彦:1, 安田 卓司:1
1:近畿大学医学部 上部消化管

上部早期胃がんに対する噴門側胃切除は増加しつつあるが,胃食道逆流や著しいQOL低下等の問題が残っている.今日,上川法等の優れた再建方法が流布されているが,鏡視下では高度なテクニックが必要で,一般化へは課題が残る.当院では簡便かつ確実に逆流を防止する方法として残胃を菱形様に作成し,偽穹窿部を裂孔内へ挿入する食道残胃吻合を考案したので,今回その再建法のビデオと現在までの成績を提示する.
<対象と検討項目>
2006年~2016年までcT1症例で噴門側胃切除を施行した55例.手術時間と出血量,術後合併症,逆流性食道炎(LA分類),3D-CTでの残胃容量測定,術後造影による食道逆流の評価を行った.
<手技>
切除に関してLatarjet枝(肝枝・幽門輪枝,腹腔枝)は温存することを基本とし,幽門輪形成は上記により蠕動運動が期待できるので施行していない.
食道残胃吻合としては①残胃を菱形様に形成②吻合部は残胃の長軸方向で真中の前壁に作成③偽穹窿部を食道裂孔内で食道裏面に挿入して固定,幽門部はある程度の容量をもたせるが大弯線は極度に垂れ下がらないようにする,ことをポイントとしており,これにより①先端部の壁の剛性が高まり,胸腔内陰圧の影響に耐えるとともに残胃大弯の過伸展が無くなり,十二指腸側への駆出力が創出されること,②仰臥位で残胃内容物が前面に位置する食道へ逆流せず,偽穹窿部へ溜まること,で食道逆流の予防を図っている.
<結果>
手術時間261±67minと出血量349±347ml,術後合併症は6例18.8%(縫合不全1例,腹腔内膿瘍1例,SSI 3例,呼吸不全1例).術後1年目内視鏡検査で逆流性食道炎はLA分類gradeN-A/B-D=46/3.中期的合併症では吻合部狭窄6例10.9%(全例内視鏡的拡張術にて対応)のみ.残胃容量は全量216±72ml,幽門前庭で166±71ml,偽穹窿部含む胃管様作成部分で50±23mlであり,胸腔内陰圧がかかる裂孔挿入部の壁は過伸展せずに形が保たれていた.術後造影では術後頭低位でも食道内逆流は認めず.5年以上経過して内視鏡を施行し得た9例はいずれも逆流性食道炎を認めず,患者状態も良好であった.
<考察>
本術式は手技は簡便と考えられ,鏡視下手術への導入も十分適応できると思われる.また術後合併症,逆流性食道炎,偽穹窿部の状態等から菱形残胃の裂孔挿入は十分安全であり,かつ逆流防止機構が有効に働いていると考える.
<結語>
当院での食道残胃吻合再建法は有用かつ簡便な術式と考える.
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