演題

O2-55-6-3

Intra-Operative Nerve Monitoringによる食道癌術後反回神経麻痺の予防効果

[演者] 小林 裕之:1
[著者] 水本 素子:1, 岩村 宣亜:1, 喜多 亮介:1, 増井 秀行:1, 北野 翔一:1, 熊田 有希子:1, 大森 彩加:1, 松原 孝明:1, 貝原 聡:1
1:神戸市立医療センター中央市民病院 外科

【はじめに】胸部食道癌における上縦隔リンパ節郭清には,根治性と安全性を両立させるために様々な手術手技の工夫が試されてきたが,反回神経麻痺の頻度は諸家の報告で20~28%と依然として高く,その対策は喫緊の課題である.一方,甲状腺・副甲状腺の手術では,術中神経モニタリング(Intra-Operative Nerve Monitoring; IONM)が普及し,2011年にはガイドラインも作成されている.我々はIONMを食道癌手術に利用してきた.
【手術手技】手術は腹臥位胸腔鏡下,6mmHg人工気胸,5(-6)ports,片肺換気で行う.挿管チューブは声帯の筋電変化を感知するEMG endotracheal tubeを用いる.筋弛緩薬は胸部操作中使用しない.神経刺激はBall Tipモノポーラープローブで,探索2.0mA,確認0.5mAの刺激電流を用い,声帯の反応をNIM response system (Medtronic)でモニターする.まず左上縦隔の気管食道動脈を包むコンパートメント(食道間膜)を腸間膜化して背側に吊り上げて視野を展開する.続いて,食道間膜内の左反回神経の走行をIONMで探索・確認し,これを温存しつつ106recLリンパ節を含む脂肪組織を食道側につけて,反回神経周囲リンパ節を頭側に向けて郭清する.頚胸境界部では,気管食道動脈を可能な限り頭側でクリップして,胸部操作を終える.
【方法】2015年7月から2016年12月に,上記手技で上縦隔リンパ節郭清を伴う胸部食道癌手術を行なった20例(Nm群)とhistorical control(Cm群)56例について,短期成績を比較検討した.また,術中IONM結果と術後の喉頭ファイバーによる声帯麻痺の判定を比較して,IONM検査の精度を評価した.
【結果】Nm群の全例で,食道間膜内の反回神経の局在を,直接視認する前に確認できた.術後反回神経麻痺(Clavien Dindo分類1度以上)はNm群2例(10%),Cm群15例(26.8%)だった(p>0.05).CD分類2度以上では,Nm群0例(0%),Cm群6例(10.7%)だった(p=0.04).IONMの特異度,感度はいずれも100%だった.
【考察】IONMの利用により,①神経を視認する以前に局在を判断することができる,②神経末梢部の分枝のうち温存すべき神経を正しく認識できる,ことが,反回神経麻痺の予防につながったと考えられた.また食道の腸間膜化を行なってから郭清を行なう手術手技との相性が良いことが,良好な感度・特異度に至る要因と考えている.
【結語】食道癌手術において,IONMの利用は術後反回神経麻痺を減少させると考えられた.
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