演題

膵島移植の現状と今後の展開:膵島移植技術は日本で活かせるのか?

[演者] 穴澤 貴行:1
[著者] 岡島 英明:1, 増井 俊彦:1, 多田 誠一郎:1, 山根 佳:1, 井ノ口 健太:1, 海道 利実:1, 高折 恭一:1, 上本 伸二:1
1:京都大学大学院 肝胆膵・移植外科学

【緒言】膵島移植は1型糖尿病に対する低侵襲な細胞移植治療として臨床展開されているが,本邦での実施症例数は伸び悩んでいる.一方欧米では,慢性膵炎に対する膵全摘後自家膵島移植が広く実施され,さらに異種(ブタ)膵島移植や幹細胞由来膵島細胞移植は臨床試験開始に到達し,本治療技術の新たな展開が示されつつある.膵島移植の本邦および海外での現状を報告し,この技術を日本でどのように活かしていくべきかについて考察する.
【現状】本邦での膵島移植は,導入時にthymoglobulinおよび可溶性TNFαレセプター製剤を用いる免疫抑制療法を採用し先進医療Bとして実施されている.先進医療承認後,13回の膵島分離中9回が条件を満たし移植された.新規膵島分離酵素の導入と脳死ドナー膵島移植の開始により,膵島分離成績は改善しつつある.また,インスリン離脱達成症例が確認され,今後,移植成績改善の報告が期待される.海外では,レジストリーデータで,3年後インスリン離脱率が47%と膵臓移植と遜色ない結果が示され,2016年に報告された第3相臨床試験でも有効性が確認された.さらに難治性疼痛を有する慢性膵炎に対する膵全摘後自家膵島移植は,高い除痛効果に加え一定の内分泌機能の維持が可能で,新たな治療オプション確立へのエビデンスが蓄積されてきている.さらに,ドナー不足の解決の切り札とされる,異種膵島移植やES/iPS細胞由来膵島移植は,技術的・倫理的問題が必ずしも解決されてはいないが,すでに第1相臨床試験が開始され,企業の参画も活発化しており今後の発展が期待できる.
【展望と課題】本邦では1型糖尿病の患者数や麻薬性鎮痛剤を必要とする慢性膵炎患者は少ないとされ,膵島移植対象患者の背景は海外と異なる.本治療技術を広く活かすには,将来的に対象患者を再検討すべきである.現在,免疫抑制剤を不要としうるデバイス等を用いた皮下移植が検討されており,その実現は異種あるいはES/iPS細胞由来膵島移植の臨床実施を促進するうえ,同種及び自家膵島移植実施患者の適応拡大にも繋がる可能性がある.また,膵島移植は再生医療等安全性確保法の範疇で実施される技術であり,適応外使用となる薬剤の使用も必要とする.このような複雑な医療の開発過程は,新たな医療の展開のプラットフォームとなり得ると思われる.
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