演題

O2-53-6-5

ERASの概念に基づいた生体肝移植症例に対する周術期管理

[演者] 長津 明久:1
[著者] 吉住 朋晴:1, 本村 貴志:1, 伊藤 心二:1, 播本 憲史:1, 原田 昇:1, 池上 徹:1, 池田 哲夫:1, 副島 雄二:1, 前原 喜彦:1
1:九州大学大学院 消化器・総合外科学

【はじめに】生体肝移植は消化器外科手術において術前状態の不良,手術侵襲の過大により最も早期回復が困難な手術の一つと考えられる.我々は適切なドナー選択,門脈血流のmodulationにより治療成績を向上させてきた(Liver transpl,Transplantation 2014).最近ではERAS(enhanced recovery after surgery)の概念を基に生体肝移植症例の早期回復を目指して1.術後早期経腸栄養,2.早期経口摂取,3.カテーテル早期抜去,4.麻痺性イレウス対策,5.敗血症対策を行った.この効果の評価と今後の課題について検討する.また,同時期よりERASの概念には一見反するとも思われる予防的両側胸腔ドレーンの留置を行っている.同法の効果と術後経過に与える影響について検討する.
【対象・方法】検討1.ERASの評価:成人間生体肝移植症例517例.I期:1997-2003(n=112),II期:2004-2007(n=126), III期:2008-2011(n=116), IV期:2012-(n=162)にわけ,グラフト生存率,在院日数,敗血症率,無気肺・肺炎発症率を比較.ERASの概念はIII期から導入した.検討2. 予防的胸腔ドレーンの留置の評価:ERAS同様III期から行い無気肺のハイリスク群について理学療法群(n=57)と胸腔ドレーン群(n=32)に分けて無気肺・肺炎・酸素使用期間およびICU入室期間等にについて比較した.
【結果】A.期間毎の成績の比較.I:II:III:IV期=1.1年グラフト生存率(77.5: 88.1:92.2:92.3%),2.敗血症率(16.8:16.8:8.6:5.5%),3.移植後在院日数(63:42:35:34日),4.MELDスコア(15.2:13.5:16.9:17.6).年代毎に重症例を対象とするも治療成績は改善していた.B.無気肺リスク因子群における予防的胸腔ドレーンの留置の効果.理学療法群:胸腔ドレーン群=無気肺発症率(63.2:18.8%, p<0.001),肺炎発症率(14.0:0.0%, p<0.05).予防的胸腔ドレーンは術後の肺合併症を有意に減少させた.
【結論】生体肝移植の術後成績は飛躍的に改善し,ERASの導入はその一因といえる.しかし,大腸手術を端として提唱されたERASの概念はより高侵襲の手術においては鍵となる合併症に合わせた修正が必要な可能性がある.
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