演題

O3-125-9-5

手術関連死亡ゼロの膵頭十二指腸切除術

[演者] 橋本 大輔:1
[著者] 中川 茂樹:1, 梅崎 直紀:1, 山下 洋市:1, 北野 雄希:1, 山村 謙介:1, 甲斐田 剛圭:1, 有馬 浩太:1, 近本 亮:1, 馬場 秀夫:1
1:熊本大学大学院 消化器外科学

背景:膵頭十二指腸切除術(Pancreaticoduodenectomy, PD)は膵頭部領域腫瘍に対する定型手術であるが,本邦における近年の報告でも合併症発生率30-40%,手術関連死亡率1-3%と未だにリスクが大きい.特に手術関連死亡ゼロを目指すためには,膵液瘻(postoperative pancreatic fistula, POPF)とそれに起因する重症術後合併症の適切なマネージメントが重要である.
目的:膵頭十二指腸切除術の手術成績を示し,POPFと関連する重症合併症の治療方針について述べる.
手術手技:当科では原則として亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を行って,膵空腸吻合によるChild変法で再建している.安全性を考慮し全例で不完全外瘻膵管ステントチューブを留置し,閉鎖式ドレーンを2本留置している.予防的抗菌薬は術当日のみ投与する.空腸栄養管を留置し経管栄養を行っている.また高齢者では術前からリハビリテーションの介入を行い,術後も継続することで早期離床をはかっている.
結果:2009年9月から2015年12月の間,連続192例のPDを行った.男性124例,女性68例,年齢中間値は68(18-87)才であった.対象疾患は176例(91.7%)が膵癌,胆管癌等の悪性疾患,他はIPMN等の低悪性度腫瘍であった.術前減黄は77例(40.1%)に行った.上腸間膜静脈-門脈の合併切除再建は27例(14.1%)に行った.5例(2.6%)は肝切除を併せて行った.手術時間の中間値は452(291-869)分,出血量中間値は635(44-3875)gであった.Grade B/CのPOPFは39例(20.3%)に発症し,炎症が限局性している場合手術時に留置したドレーンもしくは新たに超音波ガイド下,CTガイド下にドレーンを追加しドレナージを行った.しかし広範な炎症の広がりや腹膜刺激症状を認めるなど治療が奏功しない場合,全身状態が保たれている間に早期の再開腹手術(開腹ドレナージ)を行なうことで術後速やかに回復した(15例,7.8%).主に仮性動脈瘤に起因する腹腔内出血を8例(4.2%)に認めたが,発症後速やかにInterventional radiology(IVR)手技を行うことにより止血し得て,再出血はなかった.以上の治療方針により,術後在院死亡ゼロを達成している.
結語:PDの術後合併症発生率はいまだ高いが,我々は連続192例で術後在院死亡ゼロを達成している.POPFに起因する重症合併症に対しては,全身状態が悪化する前に再開腹ドレナージ,IVR等を行うようタイミングを逃さないことが重要である.
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