演題

O3-124-9-4

膵断端の完全被覆化による膵瘻防止を目指した水平マットレス式膵胃吻合法-Twin square wrapping法-

[演者] 前村 公成:1
[著者] 又木 雄弘:1, 蔵原 弘:1, 川崎 洋太:1, 橋口 真征:1, 飯野 聡:1, 迫田 雅彦:1, 上野 真一:2, 新地 洋之:3, 夏越 祥次:1
1:鹿児島大学大学院 消化器・乳腺甲状腺外科学, 2:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻臨床腫瘍学, 3:鹿児島大学医学部保健学科

【はじめに】膵消化管の再建においては,膵腸吻合法に比べ膵胃吻合法の短期成績が良好なことが示されている.当科では手技の基本構成を膵管胃粘膜吻合,膵管通密着,膵管ロストステントとして,術後膵液瘻(POPF)発生の低減化を達成してきたが,POPFに伴う周術期合併症を完全に制御し得たとは言えない.2014年より吻合手技の新たな改変を導入したことで,術後合併症のさらなる低減化を達成したので,その成績について報告する.
【方法】対象は2008年から2016年に当科で施行した膵頭十二指腸切除術199例中,膵胃吻合症例181例.1)術後合併症関連因子の探索:2013年までの症例(n=105)を対象に,POPF発生の要因として膵切離断端の不完全な被覆化にあると考え,術後7日目造影CTにて膵胃吻合部を評価した.吻合部周囲液体貯留(CT-fluid)および膵胃密着度(CT-PG contact)を4段階にスコア化し周術期因子と比較した.2)新規吻合の検証:仮説を基に水平マットレス式膵胃吻合法(Twin square wrapping(TSW)法)を考案し,動物モデルにて検証した.3)TSW法の臨床評価:評価因子は患者因子,術中因子,術後因子(血液生化学検査値,ドレンアミラーゼ(D-AMY)値,術後7日目CT,Clavien-Dindo(CD)分類による術後合併症等)とした.
【結果】1)2013年までの検討ではPOPFに対してリンパ節郭清度,術後3日目D-AMY値,CT-Fluidが,CD-Ⅲa以上の術後合併症に対して術後7日目CRP値,CT-Fluid,Body mass index,膵性状が優位な因子として挙がった.CT-FluidとCT-PG contactに相関はなかった.2)実験動物によるTSW法の吻合部組織学的検索では,膵断端が完全に胃壁に被覆されていることが確認された.3)従来法(n=99)とTSW法(n=82)の比較では,吻合時間(平均39分v.s.34分)に有意差は認めなかったが,術後7日目CRP値(平均11.5mg/dl v.s. 3.8mg/dl),CT-fluidスコア (平均1.4 v.s. 0.5), GradeⅡ以上POPF発生率(23% v.s. 1.2%),CD-Ⅲa以上術後合併症発生率(17% v.s. 6%),ドレイン留置期間(平均8.8日v.s.3.4日),術後在院日数(平均21日v.s.12.6日)のいずれも有意に低減した.
【結論】膵管粘膜吻合と胃壁による膵断端の完全な被覆は,膵吻合部周囲の漏出膵液を軽減し,炎症の波及を最小限に抑えることによりPOPFをはじめとする術後合併症を低減する.TSW法は容易にかつ,低侵襲で効率よく膵断端の良好な被覆化を達成する方法と考える.
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