演題

O3-124-9-2

Soft pancreas症例における膵頭十二指腸切除術後膵液瘻危険因子の検討

[演者] 杉本 元一:1
[著者] 高橋 進一郎:1, 小嶋 基寛:2, 小林 達伺:3, 後藤田 直人:1, 小西 大:1
1:国立がん研究センター東病院 肝胆膵外科, 2:国立がん研究センター東病院 臨床腫瘍病理分野, 3:国立がん研究センター東病院 放射線診断科

背景: Soft pancreasは膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy: PD)後膵液瘻(postoperative pancreatic fistula: POPF)発生に関して周知された危険因子である.Soft pancreas症例の中でも特に膵液瘻発生リスクの高い症例を選別することにより,リスクに応じたより適切な周術期管理につながる可能性がある.
対象と方法: 2010年1月より2013年5月の間に当院でPDを施行した連続145例を後方視的に検討した.膵の硬さは術中にsoftまたはhardに分類された.膵の形状は術前膵臓精査CT(2mmスライス)を用いて,膵切離断端における主膵管径,厚さ,膵実質の厚さ(厚さより主膵管径を減じたもの)を測定した.膵の病理組織学的評価は,コンピュータ自動認識プログラムを用いて膵断端部の線維化,腺房,脂肪の各占有面積率を定量した.以上の変数を含め臨床病理学的項目についてsoft pancreasとhard pancreasの間で比較し,更にsoft pancreas症例においてPD術後clinically-relevant POPF (CR-POPF: grade B/C)の発生リスクを解析した.
結果: 全145症例について年齢中央値は68歳,男性が102例(70.3%),浸潤性膵管癌は73例(50.3%)であった.CR-POPFは27例(18.6%)に発生していた.Soft pancreasは79例,hard pancreasは66例に認めた.Hard pancreas症例と比較しsoft pancreasでは,術前CTにおいて主膵管径はより小さく(2.2±1.9 mm vs. 5.8±3.3 mm, P < 0.001),膵実質厚さはより大きく(9.2±4.2 mm vs. 6.2±2.8 mm, P < 0.001),病理組織学的評価において線維化占有率はより少なく(3.0±4.2 % vs. 13.1±10.9 %, P < 0.001),腺房占有率はより多く(77.5±14.1% vs. 56.5±17.4%, P < 0.001),CR-POPFの発生率は高かった(30.4% vs. 2.5%, P < 0.001).Soft pancreas 79例においてCR-POPFに関する独立危険因子は,主膵管径 < 2 mm (RR, 14.251; P < 0.010),膵実質厚さ ≥ 10 mm (RR, 7.824; P = 0.007),腺房占有率 < 75% (RR, 10.946; P = 0.003),脂肪占有率 ≥ 20% (RR, 4.561; P = 0.026)であった.
結論: Soft pancreasとhard pancreasでは術前CTおよび病理組織において明確な違いが見られた.術前CTによる膵形状測定はCR-POPF予測に有用と考えられた.特にSoft pancreas症例においては,主膵管径が細く膵実質の厚い症例,更に脂肪化膵がCR-POPFの独立した危険因子であった.
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